アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
season #43
-
部活が終わり、急いで部室に戻ろうとする修をマネージャーが呼び止めた。
「今日、ちょっと時間ない?手伝って欲しいんだけど……。」
「あ、今日はちょっと……。」
修は申し訳なさそうに眉を下げる。
「……あの子なの?」
「あの子って?」
修は部室に向って歩き出す。
それを追いかけて、マネージャーもついてくる。
「昨日の、買出しの時の……。」
修は前を向いたまま、静かに答える。
「あそこには何人かいましたよね?」
マネージャーは立ち止まらない修にムッとして、少し声をあげて言う。
「一番奥にいた、可愛い子。」
「可愛いって……みんな男ですよ。」
「でも可愛いと思ってるんでしょ?」
「……。」
「誰にも触らせたくないんでしょ?」
「……。」
「あの子の代わり…なんでしょ?」
修はいきなり立ち止まり、振り返った。
マネージャーは修にぶつかりそうになって、びっくりする。
「何が言いたいんですか?」
修の眉間に皺がより、マネージャーを真っ直ぐに見据える。
「好き…なんでしょ?あの子が。」
マネージャーも視線を外さず、真っ直ぐ見返す。
「そんなこと、あるわけないじゃないですか?あいつはあんな見かけでも男ですよ?」
「だから、言えないんだ…。」
マネージャーの言葉は、責めるわけでもなく、おもしろがるわけでもなく、
穏やかで、母性すら感じさせた。
「でも、好き…なんだね…。」
修は何も言えなくなった。
何も知らないマネージャーにさえ、わかってしまうほどの修の想い。
「いいよ。代わりでも。私も代わりにしてるから……。」
「え?」
マネージャーは自嘲気味に笑うと校庭を見回した。
「10番。……私の好きな人。」
校庭でまだボールを蹴り続けている後ろ姿を見て、マネージャーが目を細める。
「キャプテン?」
女に手が早いと評判の先輩……。
「だったらちゃんと……。」
「私のことなんか相手にしてくれない。」
マネージャーは溜め息をついた。
「モテるんだよ?あれでも。あなた達ほどじゃないけど。」
マネージャーがクスッと笑った。
「女遊びばっかりしているようで、ああやって、練習はね、最後まで残ってやってるの。」
修も、ゴール前でボールを蹴っているキャプテンをじっと見る。
「私はね、女だと思ってもらえてないの。扱いを見ればわかるよ。」
「それは……。」
「いいの。あいつにはいっつも彼女がいるし。」
マネージャーは修を見て微笑む。
「だから、お互い様……。」
微笑むマネージャーの顔を見て、修はたまらなくなって抱きしめる。
「そんなことないよ……あなたは素敵な人だよ……。想いも届く……。」
抱きしめながら、頭を優しく撫でる。
「……あり…がとう。」
マネージャーの掠れた声が耳元で響いた。
智が校門で待っていると、修が走ってやってきた。
「今日は部活大丈夫なの?」
にっこり笑って、修の隣に並ぶ。
今日は修と帰る番。
「大丈夫だよ。あ……でも夏休み入ってすぐ合宿だ。」
「合宿?いいなぁ。おいらもみんなとどっか行きたい……。」
「……行く?どっか。」
修がためらい勝ちに言うと、智の顔がパァーッと華やぐ。
「いいの?部活は休める?」
「少しなら休めるよ。お盆なら休みだし……。」
「みんなもかな?」
「うん……野球部はわかんないけど…バスケ部は大丈夫じゃない?」
「ほんと?」
智が飛び上がらんばかりに喜ぶ。
そんな智を、やっぱり可愛いなぁと想いながら見てしまう自分に、
笑いが込み上げる。
そりゃ、マネージャーにもわかちゃうわけだ……。
「修君?どうしたの?」
「え?あ、いや……ど、どこに行きたい?」
修は慌てて話を続けた。
「夏はやっぱり……海でしょう!」
智の目は、もうすでに夏の海を見ているように、キラキラと輝いている。
「海か……いいね。」
「明日、みんなに聞いてみよう?」
智が満面の笑みで修を見つめた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 83