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season #58
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小さな島。
いや、そんなに小さくはないのかもしれない。
ここからでは木と崖しか見えない。
修は雅範の指差した島を見て思う。
「あそこまで2キロくらいなんだって。ゴムボートで行くにはちょうどいいでしょ?」
雅範がニコニコ笑う。
「ま、近いし、あの島には洞窟みたいのがあるらしいから、おもしろいかも。」
淳一がゴムボートの陰から現れる。
「ふうん。行ってみるか?」
修も立ち上がり、智に視線で意見を求める。
「うふふ。楽しそうだね?」
「でしょ~?決まり!」
雅範はゴムボートを引っ張って、海の方へ向ける。
智も立ち上がり、海に向かった。
ボートを海に浮かべると、和哉が乗り込んだ。
智も押すと言い張ったが、みんなに止められ、ボートに乗る。
雅範が前から引っ張り、淳一と修が後ろから押す。
「うぉっほ~♪快適快適。」
和哉がボートの上ではしゃぐ。
「なんか……みんなに悪い……。」
「そんなことないよ。私達は体力ないんだから、ちょうどいいの。」
「そんなことないよ?おいら結構……。」
「スポーツやってる3人には適わないでしょ?いいの。いいの!」
和哉は笑って智の肩を叩く。
「ほら、3人~!頑張れ~。」
ボートの上から和哉が声を掛けると、修がムッとした顔で和哉を見る。
「お前も手伝えよ!」
「無理無理!」
和哉は笑いながら、顔の前で手を振る。
「おいらが手伝うよ。」
智が海に入ろうとすると、
「いいから、乗ってて。」
淳一が智を止める。
「俺らが疲れたらお願いするから。」
「う、うん……。」
智は先頭の雅範の方を覗いてみる。
「マー君は大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫。順調よ?心配しないで乗ってて。」
和哉と智はボートの上から目的の島を眺める。
島はどんどん近づいて、あっという間に大きくなっていく。
「あ~、でもボートの上って暑い。」
和哉がダレたような声を出すと、淳一が腕いっぱいで水をはじいて
ボートの上に雨が降った。
「うわっ♪気持ちいい♪」
智の声に3人が次々に水をはじいていく。
「あはは。掛けすぎ!ボートに水が入るから!」
和哉は、楽しそうに水を浴びながら文句を言う。
「贅沢!」
修が両手で水を掬って和哉にかけた。
島には15分位でついた。
「早かったね~。」
雅範がニコニコしながら浜へボートを引っ張りあげる。
「引き潮っぽいからね……帰りは大変かも。」
修がちょっと難しい顔をすると、智が修の肩に手を掛ける。
「大丈夫。みんな一緒だから。おいらも頑張って押すよ?」
智がニコッと笑うと、修は智の笑顔につられて笑う。
「ん、そうだよな?」
浜の端っこの方から雅範が叫んだ。
「こっちこっち!洞窟っぽい!」
見ると、淳一と和哉はもう雅範の後ろに付いて歩いていた。
「俺らも行こう。」
修は智の背中に手を添える。
「うん。」
二人は走って三人の後を追った。
「ああ、本当!洞窟みたいだ。」
和哉がびっくりしたように声をあげる。
浜の端は大きな岩がゴロゴロしていて、砂がどんどんなくなっていく。
その先に崖に続く大きな岩があり、その岩の根元のところ、
岩と岩の間に、小さな口を開けた入り口があった。
「ここから入るの?」
智が不安そうに言う。
「うん。どこに繋がってるのかな?」
雅範が先頭に立って入っていく。
「行き止まりかもよ?」
淳一がそれに続く。
和哉が淳一の後ろに張り付くと、淳一が振り返って笑う。
「何?カズ怖いの?」
「こ、怖くなんかないから!」
和哉がフンッと鼻を鳴らす。
「でも、ちょっと暗くて不気味?」
修が智の背中を押して、先に行かせる。
「あ~、懐中電灯持ってくればよかったね。」
雅範は振り返ってみんなに言う。
まだ午後3時。陽射しは暑く照り付けている。
でも、この入り口には太陽の光は届かず、薄暗い。
空気も幾分涼しく感じる。
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