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season #62
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蝙蝠の巣を抜けると、しばらくなだらかな道が続いた。
相変わらず薄暗かったが、足元を確認しながらゆっくり進んでいく。
修は何があるかわからない先頭で、ドキドキしながら歩いた。
すぐ後ろに智がいると思うと、カッコつけないわけにはいかない。
何が出てきても、智と繋いだ手は離したくなかった。
ほぼ直角の曲がり道を抜けると、オレンジ色の光が飛び込んできた。
小走りに光の方へ進むと、ぽっかり開いた岩の間から、大きな夕陽が見える。
「わぁ!外だ!」
修が大声で言うと、みんながドタドタとやってくる。
「うわぁ!すげぇ!」
雅範も声を上げる。
「大きいねぇ。」
智が目を細めて夕陽を見つめる。
「ん、海に沈んでいく夕陽……絵になるね。」
淳一が智の肩に腕を回す。
「洞窟もこれで終わりってことですかね。」
和哉は智の顔を染める夕陽を、うっとりと見つめる。
修は淳一の手を払いのけ、智を連れて岩の間を抜けて出る。
細い足場があって、木で作られた階段が上に向かって続いている。
「何?修ちゃん智と手なんか繋いで。」
淳一が二人の手を引き離す。
「先があるよ。」
ムッとした顔でしょが振り返ってそう言うと、智の手を掴んで階段を上って行く。
階段には手すりなどはなく、滑って落ちたら2m位下の岩場に落ちてしまう。
一人通るのがやっとの階段を、みんな、後に続いて上って行った。
修はできるだけ下を見ずに上っていく。
智の手が修の手をぎゅっと握る。
「修君、高いとこダメでしょ?大丈夫?」
「こ、これくらいなら、大丈夫。」
ニコッと笑って、強がって見せる。
階段は20段ほどで、上りきると、さっきのプール位の広さの草地があった。
その奥の木の下に、小さな祠がある。
「あれ!」
雅範が走って祠の前に行き、じろじろと祠を観察する。
「何が祀られてるんですかねぇ?」
和哉が祠の後ろに回ってみる。
「なんだろ?」
智も首をかしげる。
すると、雅範が祠を開けようと手を掛ける。
「ダメだよ、マー君。開けたりしたら。」
「え?やっぱりダメかな?」
雅範は開けるのを止めて、手を下ろす。
「でも、なんかね。さっきの海の家のおじさんが言ってたんだけど、
昔、この木で首を吊った女の人がいてね……。」
雅範が声色を変え、智、修、淳一の3人を脅かすように顔を作る。
修は智の手を引っ張り、ちょっと強張った顔を智から隠す。
智はきょとんとした顔で、振り返って修を見る。
すかさず、そっぽを向く修を見て、雅範がゲラゲラ笑う。
「うひゃひゃひゃひゃ。修ちゃん怖いの~?」
「こ、怖くなんかないから!」
「俺の作り話で怖がってる~!」
雅範が喜んで大声で笑うと、顔を曇らせた和哉が祠の裏から出てくる。
「あながち嘘じゃないかもしれませんよ。」
「え?」
雅範が驚いて和哉を見ると、和哉が小さな声で話し始める。
「どうも、ここで密会していた男女がいたようですね。
男には妻があって…つまり、不倫です。
何度も逢瀬を重ね、でも妻に逆らえない男がある日女をここで……。」
和哉がニヤリと笑う。
「満月の夜になると出るらしいですよ。偶然にも今夜は満月……。
ほら!雅範の後ろ!」
「ギャーッ!!」
雅範が大きな声をあげて飛び上がると、修と智の後ろに隠れる。
修も智の後ろに隠れる。
「そんなわけないだろ?」
雅範の後ろにいた淳一が、呆れて肩をすくめる。
和哉がお腹をかかえて笑っている。
「う~!カズ、だましたな~っ!」
「祠の後ろにそんなことまで書いてあるわけないでしょ。」
和哉はまだ笑い続けている。
「修ちゃんも怖がっちゃって!」
和哉が修を指さして笑う。
「ち、ちがっ!怖がってないから。」
修は智を見て、訴える。
智はふふっと笑って祠に近づく。
「あ、危ないかもしれないよ。取り憑かれちゃうかもよ。」
雅範が修の後ろから声を掛ける。
「大丈夫。ここは海の神様を祀ってるとこだから。」
淳一がみんなの後ろからそう言うと、智の腕を取って一緒に祠の前まで行く。
「海の神様?」
智は淳一に腕を取られたまま進んで行く。
祠の前まで来ると、淳一が手を合わせて目をつぶる。
智も真似して手を合わせる。
それを見た雅範と修も、二人の後ろに並んで手を合わせる。
和哉は少し離れたところから手を合わせた。
「みんなが海で楽しく遊べました。ありがとうございます。」
智は小さくつぶやくとニコリと笑う。
西の空を見ると、太陽がもう半分位沈んでいる。
「そろそろ帰らないと、暗くなっちゃうかも。」
智がみんなを見て、元来た道を帰ろうとする。
「そうだね。暗くなったらゴムボートじゃ危ない。」
淳一もそう言って、智の隣に並んだ。
「そうだよ。」
修も智の隣に並ぶ。
雅範と和哉も続いて階段を下りた。
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