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season #80
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楽しかった旅行から帰ると、5人を待っていたのは熱い太陽と部活三昧の毎日だった。
修は全国大会予選、淳一は春の高校野球、雅範は新人戦に向け汗を流した。
和哉も新聞社主催のコンクール、智は秋のコンクールに向け、作品を仕上げる。
和哉の副業も順調で、修が自分の身を犠牲にして守った
智の寝顔が売られることはなかったが、
修のキス顔は100枚を越える売り上げになり、和哉の笑いは止まらない。
「いやぁ、あの旅行代は、ほぼ修ちゃんの写真で行けたね。
次はジュン君のキス顔で150枚目指します!」
ニコッと笑って和哉は言う。
後に、この写真を越えるヒット写真に巡り合えることになろうとは、
この時の和哉は思ってもいなかった。
暑い夏は彼らの汗と共に通り過ぎる。
2学期になり、それぞれの部活の合間、相変わらずのランチタイム。
「修ちゃん、生徒会、立候補するんだって?」
雅範が息咳切って走ってくる。
「お前……どこでそれを……。」
修はから揚げを持ったまま動きを止める。
「部活の先輩。俺にも立候補しろって!」
雅範が不満そうに口を尖らせる。
「俺も言われた。」
淳一はお弁当から目を離さずに会話に加わる。
まだ、智と和哉は来ていない。
「あ~、やっぱり?」
雅範は淳一の隣に腰掛ける。
「あれ、本当なの?生徒会に入ると部費が優遇されるって。」
弁当を広げながら雅範が言うと、修もから揚げを口に入れ、大きく口を動かす。
「そう、先輩達は思ってるみたいだね……。」
淳一が頬杖をついて答える。
「どうせ、先生達が故意に流したうわさだろ?立候補が少ないから……。」
ゴックンとから揚げを飲み込み、親指と人差し指、2本の指でペットボトルを摘み上げる。
「で、お前ら、どうすんの?立候補。」
修が二人に視線を移すと、二人は顔を見合わせる。
「しないよ。そんなの。めんどくさい。」
雅範は弁当の蓋についた海苔をきれいにはがす。
「俺も。時間ないし。修ちゃんはするの?」
淳一が、肘をついたままほうれん草を口に運び答える。
修は二人から顔を背けて言う。
「俺は……立候補する。」
「え~~~っ!修ちゃん、立候補するの?」
雅範の声が中庭中に響き渡り、みんなが振り返る。
「雅範!声でかい!」
淳一にたしなめられ、雅範は慌てて口を塞ぐ。
「なんで?どうして?」
雅範が目をパチクリしながら聞く。
「……そういうことになった。」
「なったって、どういう意味?」
淳一が不審そうに修を見る。
修は昨日の部活のことを思い出す。
しつこく立候補しろというキャプテンに、修はいい加減うんざりしていた。
「だったら、先輩が立候補すればいいでしょう?」
「ばか。俺じゃダメなんだよ。確かに俺も人気はあるが、若干弱い。
バスケは赤石を出すって言ってるし、野球は松田を出すって言ってる。
これに対抗できるのはお前しかいないだろ?」
「あいつら、立候補なんてしないですよ。」
修がめんどくさそうにそう言っても、キャプテンはしつこく食い下がる。
「わかんないだろ?な、お前なら確実だから!」
修は溜め息をついて、キャプテンを見ると、
「じゃ、先輩が本当に好きな人に告白したら、俺も立候補してもいいですよ。」
「俺、本当に好きな人なんて……。」
「いないんなら、この取引は中止。」
修は着替えを済ませ、部室から出て行こうとする。
「わかった。告白するよ。必ず、立候補しろよな!」
キャプテンが走り出す。
「ちょ、ちょっとキャプテン!」
修はキャプテンの後を追いながら考える。
マネージャーに告白なら……。
もしそうでなくても、諦めがつく?
どっちにしろ、マネージャーにとっては……。
考えながら走っていると、急に目の前の壁にぶち当たる。
「いってぇ……。先輩?」
壁はキャプテンの大きな背中だった。
キャプテンの脇から前に回りこもうと顔を出すと、
キャプテンの前にはマネージャーが立っている。
「せ、先輩?あの……。」
きょとんとしているマネージャーをよそに、大きく息を吸って、キャプテンが声を上げる。
「俺と付き合えよ。」
マネージャーはびっくりして周りをキョロキョロする。
「え?……まさか、斉藤君!?」
キャプテンは目を見開き、びっくりしたまま笑い出した。
「んなわけねーだろ?」
「え?えーっ……と?……私?」
「お前しかいないだろ。」
「またからかってる?それとも遊び?」
マネージャーもまたかと、呆れたように笑う。
「バカ、本気だよ、本気!」
ぶっきらぼうに言うキャプテンに、修は微笑まずにいられない。
「マネージャー、よかったですね!」
「え?あ……。」
見る見る顔が赤くなっていくマネージャーに、修は可愛いな、と初めて思った。
「付き合うな?付き合うよな!」
キャプテンは強引にマネージャーの腕を掴む。
「痛いってば!」
「どうなんだよ!」
キャプテンは顔を背けて、目をぎゅっとつぶる。
「早く言え!これ以上待ったら、心臓が壊れる。」
キャプテンの、その姿も可愛くて、修はわからないようにクスクス笑う。
「マネージャー、ちゃんと本心を言ってくださいよ。
先輩、本気の告白なんですから。」
「え……。」
マネージャーはまだ何が起きてるのかわからないようで、
助けを求めるように修を見る。
修は大きくうなずく。
「どうなんだ、付き合うよな!」
先輩の大声に、釣られたように、マネージャーが言う。
「はい!」
先輩はやっと目を開け、マネージャーを見る。
「よし!」
言うが早いか、マネージャーを抱きしめ、グルグル回した。
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいから!」
「ははは。修、ありがとう!お前のおかげだよ!」
キャプテンの笑顔が眩しくて、修も笑顔になる。
「先輩も年貢の納め時ですね。」
「おう!ほんと、お前のおかげだよ。……でも、さっきの約束も忘れるなよ?」
先輩がニヤッと笑った。
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