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episode.03 契約
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〜琉side〜
今目の前の男はなんと言っただろう。
"契約恋愛"とか言ったか。
「え……?」
「……俺、金困ってるし。メリットあると思うんです。」
「ちょ、ちょっと待って。俺全然ついていけてない。」
「あー……俺はゲイなんで。」
「あ、そうなの?」
「いや、まあ正確に言うと違うんですけど細かいことはいいです。契約恋愛、月10万で食事、寝床付き。やりません?」
「え、めちゃめちゃやる気満々じゃん。」
「演技だったら気楽じゃないですか。俺は10万もらえて、恋人ごっこ。あなたは10万払って、役作り。悪くないと思うんですけど。」
「は……ちょっと待て。お前今いくつ?」
「……19ですけど。」
(5歳下?!いや、下手したら6歳……)
「俺今年で25なんだけど。」
「じゃあ6歳差ですね。役柄は年齢差あるんですか?」
「俺が2個上。」
「ちなみにどっちがタチですか?」
「タチ……?」
「……知識なさすぎですね。タチは攻め側ってことです。」
「あー、俺がタチ。」
「じゃあなおさら好都合。俺はネコなんで。」
「ネコが受け?」
「はい。どうです?月10万、高い?」
「いや、値段はどうでもいいんだけど。お前そんなことしていいの?」
「なにがですか?」
(お金で愛を買うみたいなの……よくねえ気がするんだけど。)
琉がなにを考えているのか恋は悟ったのか、ため息をつくと口を開く。
「俺、運命とか恋心とか信じてないんで。その辺は割り切ってやれるつもりです。仕事と同じ。」
「お前学生じゃないのか?」
「……高校から行ってません。」
「今の仕事は?」
「……芸能系とレストランのアルバイト。」
「お前芸能系なの?俺全然知らなかった……」
恋は一瞬顔を歪めたように見えた。
「……まあ、赤津さんが光なら俺は影ですから。」
琉は恋はこの話をしたくないのだと、すぐにわかった。
「まあ詳しくは聞かねーけど。本気でお前、やる気なの?金に困ってるから?それとも俺のため?」
「まあお金のためですね。俺死にたくはないんで。」
「そう……わかった。いいよ。お前と契約してやる。」
(…なんか昔のドラマにこういうのなかったか?契約結婚的な…俺がまさかそれやるなんて…)
「はい、じゃあ契約しましょう。」
恋はそういうと部屋の引き出しから紙を一枚出してきた。
そしてペンも持って、またベットの近くに座り直す。
「契約内容は、俺が指定してもいいですか?」
「いいよ。俺は役作り手伝ってもらう側だし。」
「それじゃ……契約金は月10万。食事、寝床は俺の家でいいですか?」
「え、いいの?」
「赤津さんの家に行ったらスキャンダルになりそうなんで。」
「あー……あの家今使ってないけどね。」
「え?」
「俺今ホテル泊まりしてたから。ここで生活させてくれるんなら嬉しいわ。」
「じゃあ赤津さんはこの家で俺と同棲してください。それからやることは、脚本の中にあること。デートしてるならデートするし、セックスしてるならセックスする。」
「……お前結構身も蓋もないのな。」
「……。あ、それから赤津さんがタチで。この契約が始まった時から俺たちは恋人同士です。まあどんな風に関係を作るかは赤津さんに任せます。ただし……」
恋は紙に契約内容をまとめ、最後まで書ききったところで顔を上げた。
「必要以上の干渉はなし。お互いのプライベートは守りましょう。」
「おう。いいぜ。」
「ではこれで、いいですね?」
恋は琉に契約内容を見せる。
「はいはい。」
「それでは今日から、契約を結びたいと思いますので。よろしくお願いいたします。」
恋は律儀に頭を下げた。
「こちらこそよろしくな、恋。」
恋は一瞬驚いた顔をした。
「……なんだよ。恋人なんだろ?年下を青木、とか青木くんとか呼ばないだろ?」
「それもそうですね。でも俺は赤津さんって呼びます。」
「好きにしろ。」
「家事は分担にしましょう。荷物とかどうしますか?」
「今日仕事帰りに取りに行ってくる。」
「わかりました。赤津さんはとりあえずこの部屋使ってください。今度家具見に行きましょう。」
「おう。お前仕事休みいつなの?」
「あー……両方ともない日ってほぼないんです。」
「明後日は?俺撮影朝だけで昼から暇なんだ。」
「あ、その日は俺も朝だけです。」
「じゃ、その日に買いに行こうな。」
「はい。わかりました。」
(勢いで契約しちまったけど……よかったのか?)
琉は奇妙な契約関係を結んでしまったものだ、と恋を見ながら考え込んだ。
*
17時、撮影現場。
「よろしくお願いします。」
今夜の収録はバラエティ番組。同期の俳優で明日、7月9日から公開の映画で共演している木之本翔也(きのもとしょうや)と出演だ。
「りゅーーーーーうぅぅぅっ!」
翔也は琉に向かって突進してくる。
「いてえ。」
「ごめんごめんー。あれ、琉なんかいいことあった?」
「ねえけど?」
「え、本当?絶対なんかあったでしょ?」
(目ざとい。)
「まあちょっとな。」
「琉がご機嫌とか珍しい!しかも昨日ベロベロに酔いつぶれて帰ったのに。絶対不機嫌だと思ってたわ。」
琉は翔也の頭をぐりぐりと抑え込む。
「酔いつぶれてたなら送れよ?あぁ?」
「いたい!!痛いって琉!!悪かったよ!ごめんごめん!!」
琉はパッと手を離す。
「許してやるから、お前協力しろよ。」
「なにを。」
「赤津さん、木之本さん、お願いします!」
話している途中でADから声がかかる。
「後で話すわ。」
「わかった。」
翔也は楽観的なお調子者に見えて、実は冷静沈着、判断能力に長けていて、琉の頼れる親友だ。
また、そのイケメンな容姿のおかげもあり、恋愛経験も豊富で、さらには"好きになったやつが好き。男女なんで二の次。"というタイプであり、ゲイというものへの偏見や抵抗もない。
おそらくはこの"契約恋愛"も翔也なら受け止めてもらえるだろう。
琉と翔也の2人は撮影スタジオに入った。
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