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episode.07 大きな手
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〜恋side〜
7月18日 22時。
(最悪……)
恋は自宅に着いた時、かなり不機嫌だった。
*
20時 LOVECENTER 撮影スタジオ
「今日は女装で無理やり系ね。」
「え……俺そういうの嫌だって言いませんでした?」
だいたい撮影前に、その日の撮影コンセプトが伝えられるのだが、今日は恋が最も嫌う無理やり犯すというタイプの撮影らしかった。
「いやー、悪いね。支援者たっての希望でさ。恋くん受けじゃないとダメだって言うもんだから。」
「はぁ……わかりました。」
恋はしぶしぶ了承し、用意されていた衣装を着る。
(なんだよこれ……)
着させられたのはセーラー服。イケナイJKスタイルらしい。
「じゃー頼むねー。」
監督の声を聞き、恋はベットに入る。
そこで恋の手はベットの背もたれにくくり付けられる。
(痕つかないといいな……あと上手い人がいい……)
「入ってきていいよー。」
監督がそう言ってすぐ、入ってきた男優は、7月7日にも恋の相手役を務めた男だった。業界では下手くそで有名。それは恋も前回体験済みだった。
(気分最悪。これで無理やりされるとか絶対痛いじゃん。ほんとありえない。)
「じゃあいくよー!3、2……」
監督からキューがでてカメラがまわりはじめ、撮影は始まった。
1時間後。
「はい、お疲れ様でしたー。」
(痛いなんてもんじゃない。なにこれほんとに最悪。痛いだけならまだしもまた中に出しやがって!処理がめんどくさいんだよふざけんな!)
恋は心の中で相手に悪態をついた。だが体が痛すぎて正直相手に何かを言いたい気分ではなかった。
さっさとシャワールームで事後処理をして帰ろう。そう思っていた。
「ねー、恋くんいつにも増して不機嫌じゃない?」
恋が通り過ぎたところで、あまりに恋のオーラが気にかかったのか、1人のスタッフがそう呟く。
「仕方ないよ……今日恋くんの嫌いな無理やり系だし、何より相手あれだもん……」
スタッフは恋の相手役がツヤツヤとした顔で帰るのを見て、顔をしかめる。
「……シャワールーム使ってきていいですか。」
そんなスタッフに恋は不機嫌そうな声で話しかける。
「あ……今日故障してて使えないって……」
スタッフは申し訳なさそうにそう伝えた。
「……わかりました。お疲れ様でした。」
恋はそう言ってさっさとスタジオを出て行った。
(うーわ気持ち悪い。中から垂れてくる……)
恋は自分の尻に違和感を覚えたまま、電車に乗っていた。
(今日赤津さん帰り遅いんだっけ……)
恋はそんなことを考えながらスマホを手にする。
そしてLINEアプリを開いた瞬間、また恋の気持ちは沈んだ。
赤津「恋、今日仕事早く終わって、もう帰れた。飯俺が作っとくから。」
(風呂で処理しなきゃいけないのに……ご飯作ってくれたんじゃ、きっと俺のこと待ってる……)
恋「わかりました。ありがとうございます。」
恋は簡潔に文章を打ち込み、どうするか思案し始めた。
その時だ。
(………………は?)
恋は自分の尻に違和感を感じ、固まる。それは中から垂れ流しになっているアレではない。
恋の思考は停止しかけた。
電車はそれなりに混んでいる。たまたま当たってしまったのかもしれない。恋がそう考えた時、また違和感が恋を襲う。
(ふざけてんの?誰だよ?)
恋がそう思って振り返ると、自分より少し小柄で、40代後半の禿げた男が自分の尻を恍惚とした表情で触っているではないか。
(痴漢かよ。勘弁しろって……)
恋はため息をついた。正直、恋は"気持ちいい"ということがわからない。AV撮影でも感じたことはない。
さすがにペニスを触られれば達するが、あくまでそれは生理現象。恋自身が気持ちいいという感覚に陥ったことはなかった。
そして今この瞬間も例外ではなく。
「ねー……可愛い顔してるけど……気持ちよくない?ねぇ?変な感じしない?」
男はハァハァと息をしながら小声で話しかけてきた。
(話したら負けだ。)
恋は無視を決め込む。
(手の動かし方は今日のあいつよりマシか……)
恋はスマホをいじりながら冷静に考える。
先ほど撮影で相手役だった男よりはまだいい。それは痛みがないという点においてのみ、だが。
「なんだ、つれねえな!」
恋の反応が気に入らなかったのか、男は舌打ちして次の駅で降りて行った。
だが恋の気分は最悪だった。
*
やっと家に着いたが、恋の機嫌は底辺まで落ちている。
「ただいま。」
「おかえり。飯にする?風呂にする?」
「赤津さんご飯食べました?」
恋は靴を脱ぎながら尋ねた。
「まだ。俺さっき風呂入ったんだ。」
言われて見てみれば赤津の髪は少し濡れていた。前髪から水が滴り、艶っぽいその瞳は恋を映している。
「そうですか……」
「先風呂入ってきな?疲れてんだろ。」
赤津はそういうと恋の頭をポンっと優しく叩いた。赤津の手は大きかった。
「え……」
「待ってるからな。」
赤津はそう言ってにっこり笑うとリビングに向かって歩いていった。
(何今の……)
恋はなでられた頭を押さえた。
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