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episode.27 約束
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〜恋side〜
「恋、大丈夫か?」
木之本が浴室に消えてから、明希と木之本の着替えやタオルの用意、濡れてしまった廊下の掃除などをしていた恋に赤津が声をかけてきた。
「大丈夫です。」
「無理するなよ?」
恋の顔は青ざめていて、明希の様子に動揺したことがおそらく赤津にも伝わっている。
恋はやることを終えるとキッチンに立ち尽くした。
一体何があったのか。明希があそこまでなるなんて。
恋はぎゅっと拳を握り締める。
そんな恋を、赤津が、後ろから優しく抱きしめた。
「赤津さん……?」
「大丈夫。きっと大丈夫だから。」
赤津の大きな手が恋の頭を撫でる。
赤津はしばらくの間、そうしてくれていた。
「てか翔也、どうやって明希くんのこと風呂入れるつもり……?!」
赤津はハッとしたようにそう言う。
「琉ー!恋くーん!」
やはり困ったのだろう、2人は呼ばれた。
「大丈夫ですか?」
扉の外から声をかける。
「とりあえず体洗ったりとかはできたんだけど、なんかめっちゃ体熱くて、絶対熱ある気がする。」
「じゃあ湯船にはつけないほうがいいか?」
「そうですね……木之本さん、明希は湯船につからせなくていいです。」
「あ、わかった。じゃあ今出るから、着替え手伝って!」
木之本はそう言うとシャワーの音の後に出てきた。
「木之本さんはお湯つからなくていいんですか?風邪ひきますよ。」
「平気。うまく洗えなさすぎてずっと風呂場いたら体あったまったよ。」
木之本はそう言いながら明希の体を拭こうとタオルに手を伸ばす。
「俺たちが明希のことやるので、木之本さんも服着てください。それ、着替えです。赤津さんのなのでサイズは大丈夫だと思うんですが……」
「うん、ありがとう。」
それからさっさと明希に服を着せ、木之本も服を着て、未だ目を覚ましそうもない明希を部屋に運んだ。
「あ、恋、どうだ?熱あったか?」
明希を寝かせてリビングに戻ってきた恋に赤津がそう聞いてきたので、恋は頷く。
「38.7度。だいぶ高いです。薬飲ませたいですけど、夕飯食べてないので……起きてから何か食べさせて飲ませます。一応首と脇と鼠蹊部を冷やしてきたので、少しは下がると思います。」
「あとなんかいるものある?」
「とりあえずは……明希がまだ起きる気配がないので。木之本さんは大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。」
「じゃ、何があったのか聞かせてもらおうか。」
恋、赤津、木之本の3人はソファに向かい合って座っている。
「その前に1つ、恋くんに聞きたい。」
「なんでしょうか。」
「この話をしたら、明希ちゃんの過去につながるんだと思う。それを俺は聞きたいって言うし、多分琉も、ね。俺たちに話せないようなことなら、俺は今日のことを話さないし、忘れる。あとのことは全部恋くんに任せる。どうするか、判断は恋くんに任せる。」
木之本は真剣な表情でそう告げた。
そう、木之本の言う通り、おそらくこれは明希の過去の、それも明希が忘れたいとずっと願ってきたことの話になるのだろう。暗闇とは明希にとってトラウマそのものなのだから。
出会って2ヶ月。赤津や木之本がとてもいい人だということは知っている。赤津は契約とはいえ自分を大事にしてくれている。木之本も自分たちの関係性を理解し、明希とも仲良くしている。信用してもいいのだろう。
だが恋にはどうするべきかわからなかった。
明希の過去を知っているのは、おそらく自分と彼らだけ。それを2人に話すことを、明希はよしとするだろうか。忘れたがっている出来事だというのに、それを言いふらすような真似をしても良いのだろうか。
2人の明希への反応が変わってしまったら。
「恋くんが、話すべきじゃないと思うなら、それで構わない。でも、俺たちは、何か聞いたからって、明希ちゃんへの態度を変えたりするようなやつじゃないっていう自信はある。」
木之本は恋の迷いをわかっているかのように、優しい声色で声をかけてきた。
「……約束、してください。絶対に他の人には言わないこと。それから明希が自分から話すまで、明希には知っている素振りを見せないこと。約束できるなら、話します。」
赤津と木之本は顔を見合わせて頷いた。
「恋がそう言うならそうする。約束するよ。これでも俳優だからな、演技は得意だぞ。」
「そうだね。」
「……とりあえず、今日の話から聞かせてください。」
「うん。」
木之本はゆっくりと今日の出来事を話し始めた。
UH経営のお店に入るのを躊躇ったこと。
雷がなる前に恋に会わなければならないと焦っていたこと。
笹倉傑という男に会ったこと。
停電した後に気を失ってしまったこと。
「……状況は最悪ですね。」
「明希ちゃんがずっと恋くんのこと呼んでた。」
「すべてお話しするべきなのかもしれませんね……明希が目覚めたら……少し覚悟をしたほうが良いかもしれません。」
「それはどういう……」
「……ことの始まりは中学3年生の時のことです。」
恋は赤津の質問に答える前に、話を始めた。
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