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episode.33 これは本心?
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〜恋side〜
「お待たせ。」
恋はタマゴ粥をもって部屋に入る。
「ん、じゃあ俺下に……」
「あ、待ってください……」
立ち上がった木之本の服の裾を明希が控えめに掴む。
「その、えっと……」
これは自分が邪魔者かなと恋は思い、クスクス笑いながら枕元の電気スタンドが置いてある棚にタマゴ粥と水、薬が乗ったお盆を置く。
「俺、赤津さんと片付けしてくるので、木之本さん、明希にこれ食わせてやってください。」
「……?わかった。」
木之本は何だかよくわかっていない様子だったが、明希は少しだが心を開いたようだ。
明希は多分、木之本が全て知っていると察している。それでも何も知らないかのように振る舞い、明希の全てを受け止めようとしてくれる木之本のことを、少しは知りたくなったのではないか。
恋はそんなことを考えながら階段を降り、赤津のいるキッチンに戻る。
「あれ、早かったな?」
「はい。木之本さんに任せてきました。」
「その様子だと、契約はすることになったんだな。」
「多分、そうですね。」
「あ、片付け終わったからな。」
「すみません。というか赤津さんと片付けるって言い訳してきちゃったのに。」
恋はそう言って笑った。
「まあいいだろ。な、恋。」
「はい、なんで……す、か。」
赤津は恋をぎゅっと抱きしめ、頭を乗せてきた。
「どうしました?」
「ん、なんか、なんとなく。」
「なんですかそれ。」
恋はくすりと笑う。
「なぁ、恋。」
「はい?」
「……いや、なんでもない。」
赤津は少し間をおいて、そういうと恋を離す。
「恋、明日仕事は?」
「夜です。」
「そっか、じゃあ明日の夜は明希くん俺と翔也で看病する。」
「助かります。さっき熱計ったらまだ38.5度あったので……薬を飲んでも、今夜はまだ熱が上がるでしょうし……」
「ん、恋も無理すんなよ。」
「大丈夫ですよ。」
*
〜琉side〜
「あれ、早かったな?」
すぐに戻ってきた恋に琉はそう声をかける。
「はい。木之本さんに任せてきました。」
「その様子だと、契約はすることになったんだな。」
「多分、そうですね。」
恋は少し安心したようだった。
「あ、片付け終わったからな。」
「すみません。というか赤津さんと片付けるって言い訳してきちゃったのに。」
恋はそう言って笑った。
「まあいいだろ。な、恋。」
琉は、ふと、恋を抱きしめたくなり名前を呼ぶ。
「はい、なんで……す、か。」
恋が振り返るのと同時に抱きしめ、頭を乗せる。
「どうしました?」
「ん、なんか、なんとなく。」
「なんですかそれ。」
恋はくすりと笑う。
「なぁ、恋。」
好きだ。
そう言おうとして、でも言うのを躊躇う。
「はい?」
これは契約だからか。
自分は演技にのめり込んでいるのか。だから恋のことを好きだと、そう言いたくなったのか。
これは、自分の本心なのか。
「……いや、なんでもない。」
琉は結局言うのをやめて恋を離す。
「恋、明日仕事は?」
「夜です。」
「そっか、じゃあ明日の夜は明希くん俺と翔也で看病する。」
「助かります。さっき熱計ったらまだ38.5度あったので……薬を飲んでも、今夜はまだ熱が上がるでしょうし……」
「ん、恋も無理すんなよ。」
「大丈夫ですよ。」
琉は、自分の中に生まれたさっきの感情は、知らないふりをした。
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