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episode.39 知らない感情
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〜恋side〜
10月20日 12時30分
「あぁぁぁぁ!どうしよう!!!俺本当にわかんない!!何あげたら喜ぶ?!ていうかお祝いとか俺1人でするもん?!それとも4人でやった方が喜ぶ?!」
恋と赤津の前でうなだれているのは木之本。
4日後に迫った明希の誕生日をどう祝うべきかという相談をしに来ている。
恋は28日までLOVECENTERの撮影がお休みで、赤津と木之本も今日は午後から仕事、かつ24日は2人とも休みだった。
「まずその日の明希ちゃんの予定すら俺知らないんだけど?!」
「あー、あいつたぶん自分の誕生日のことなんて忘れてるので。でも確かその日は火曜日ですから、講義は午前中で終わるはずです。」
「まじかい。」
「とりあえず明希くん誘ったら?」
「……やっぱ4人で祝おう。その方が明希ちゃんも楽しいだろうし。」
「でも、2人は付き合い始めたんですよね?」
恋の熱が下がったのはつい昨日のことだが、明希からまず聞いた話がそれだった。
明希が自分から付き合ってみたいというのは、つまり木之本となら向き合ってみたいと思ったということだ。
「まあ……でも、明希ちゃん、4人で過ごしてるとき本当に楽しそうだから。」
よく見てるなぁ、などと考えながら、恋は頷く。
「そういうことなら……木之本さん、料理作りましょう。絶対に明希喜びますから。」
「よし!頑張る!」
「んで、プレゼントは?」
赤津がそう聞く。
「んー……何あげたらいいのかイマイチわかんなくて。」
「何あげても喜ぶと思いますけど……」
「恋人へのプレゼントねぇ……恋なら何もらいたい?」
「え……」
突然振られて心臓が跳ねる。
最近自分はおかしい。
赤津と目があうと心臓が跳ねる。ドクン、ドクンと鼓動が聞こえるのではないかというくらい音を立てる。
赤津に頭を撫でられたり、抱きしめられたりすると胸がポカポカと温かくなる。この感情がなんなのか、恋は知らない。
「そ、ですね……好きな人が選んでくれたプレゼントならなんでも嬉しいですけど。」
「……明希ちゃんは俺のことが好きなんではないんだよ。」
「でも他の人より心開いてるのは火を見るよりも明らかです。」
「そっか……あー!もう何あげたらいいんだよ?!」
「荒れるな。落ち着け。明希くんが日常的に使うものとかどうよ。」
「たとえば……?」
「うぐ……そう言われるとちょっとわからない。」
琉が再び考え込む。
そこで恋が助け舟を出すことにした。
「文房具とかは大学で毎日使いますよね。あとはこれから先必要そうなのはネクタイ。洋服とか靴っていうのもありですね。」
「ふむ……」
「恋人らしいものならお揃いのアクセサリーとかどうですか?」
「アクセサリー?」
「はい。たとえばネックレスとか、指輪とか。指輪もあまり高くないものなら重いとかいうこともないですし。」
「……あ!いいこと思いつきました!木之本翔也、買い出しに行ってまいります!!」
「え?」
「え、今から行くの?」
「おう!てことで琉はまた後で。恋くん、24日にね!」
「あ、はい。」
「いってらっしゃい……」
翔也がバタバタと家を出て行く。
「……思い立ったらすぐ行動……相変わらずだ。」
「すごいですね。」
翔也がいなくなり、2人の間に少し気まずい空気が流れる。何せ昨日まで恋の熱はあったのだ。
そう、乱暴にシてから、2人でゆっくりする時間があるのは今日が初めて。
「……赤津さん。」
「ん?どうした?」
"なんで、あんなことしたんですか?"
"嫉妬とか言ってたけど、何に?"
そう聞いてみたかった。でも、聞けなかった。
なぜかはわからない。でも聞くのが怖いと思った。
「いえ。お昼何食べますか?」
「んー。スパゲッティでも食べる?」
「いいですね。確か家にあったはずですし。作ります。」
「ん、任せる。」
赤津はポンポンと頭を撫でてくる。
(まただ……)
胸が温かくなるだけではなく、きゅっと締め付けられるような、そんな感覚。優しく笑う赤津を見ていると、そんな感覚に襲われる。
恋はこの感情を、まだ知らない。
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