アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
episode.40 烏沢財閥
-
※視点が乱れます。
「青木恋の様子は。」
烏沢財閥、第一相続人の烏沢俊蔵は、豪邸のとある部屋で男と話していた。
「特に変化ありません。しかし、つい最近、あの事故の資料を調べていたものがおりました。」
「なに?」
「警察内部の人間であると思いますが、誰なのかまでは特定できませんでした。」
「まあいいだろう……」
「それから、赤津琉が、青木恋と一緒にいることが多くなっています。」
「赤津……か。」
「はい。」
「これからも見張りを続けろ。LOVECENTERはどうだ?」
「青木が辞める気配もないので、今まで通りです。多額の支援がありますから、逆らうことなどできませんよ。」
「そうだな……」
「それから、兄上の真澄(ますみ)様が、そろそろ俊蔵様に相続したいとおっしゃっていました。」
「そうか、わかった。手配を進めておいてくれ。」
俊蔵はそう言うと立ち上がり、部屋を出て行く。
そして長い廊下の突き当たり、息子の紘の部屋をノックする。
「紘、入るぞ。」
「はい。」
紘は財閥が取り仕切る会社の経理をやっている。
「どうしましたか、父上。」
「紘、そろそろ、いい頃だ。」
「なんのこと、でしょうか。」
「……青木恋を、始末する。」
*
「え?今なんて?」
恋の家からすぐ近くの交差点のところで、翔也は父親、木之本浩也からの電話を受け取っていた。
「恋くんは、車に乗ってたの……?それじゃ……加害者の顔を、見てるってこと……?でもそれなら、なんで資料には恋くんが乗ってるって書いてなかったの……?」
車が多く行き交い、時折クラクションの音がする。
翔也の胸はざわついた。
「………………わかった。ありがとう父さん。」
翔也は電話を切ると、烏沢財閥について、調べ始めた。
*
「はぁ……」
父親がいなくなった部屋で1人、紘はため息をついていた。
「……あんなに小さかった子が、こんなに……」
紘の手元には恋の写真。
9年前、俊蔵が不慮の事故、いや、故意に起こした事故で死んだ男女の一人息子。
「……この子に非はないだろう……」
事故の第一発見者、というのは本当だ。
紘はたまたま見てしまった。俊蔵が、血眼で、ものすごいスピードでトラックを運転し、夫婦の運転する車に突っ込んだところを。
どうして青木夫婦が俊蔵に殺されたのか。
それは、事故当時に遡らねばならない。
恋の両親、哉太(かなた)と璃子(りこ)は探偵だった。
表向きはただの会社員。
だが、その裏で、不正に手を染める企業の情報や、警察が掴みにくい情報の収集などで活躍する探偵。
俊蔵がまだ、若手の刑事だった頃の話だ。
そして、2人は行き着いてしまった。烏沢財閥に。
烏沢財閥はあらゆる不正に手を染めていた。
当時の紘はそれを全く知らなかった。当然、哉太や璃子のことも、事故の時に知った。
俊蔵は口封じのために、2人を殺害した。
罪をなすりつけたのは、そのトラックの運転手、だった人間だ。その男も、俊蔵が殺したのだろう。
紘は恐ろしくなった。だが、逆らえなかった。
結局自分は第一発見者となり、警察に通報。
そのあと車の中から、10歳の少年が助け出されたとニュースで知った。
あんなに酷い状態だったのに、助かったのか。
よかった、と紘は心底安心していた。
だが俊蔵は、また人の命を奪おうとしている。
そこまで富と権力を守りたいのか。
紘にはわからなかった。だが逆らう勇気もなければ、逆らう方法もない。
俊蔵は警視総監だ。警察にこのことを言っても意味がない。
紘はぎゅっと拳を握りしめた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
45 / 832