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episode.41 幸せとは
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〜翔也side〜
10月24日
(……今日は諦めよう。)
翔也はなんとか、琉と話す時間を作りたかった。
それは4日前の電話の内容を伝えたいと思ったからだ。
だが気づけば明希の誕生日。
そんな日に暗い話を持ち込みたくはない。
「おい翔也!早くしねえと明希くん来ちまうぞ!」
「うっわやっべ!!ほんとだ!!!」
明希との約束の時間は16時。もうすぐその時間だ。
明希は一度家に帰り、荷物を持ってここに来る。
今日はお泊りだ。
「よく怪しまれなかったよな。」
「あいつ本当に自分の誕生日忘れるんで……毎年祝ってるんですけどね。」
琉の言葉に恋は苦笑いだ。
「つか……甘いもの多すぎじゃね?」
琉はキッチンに並んだ料理を見てそう言う。
「明希は甘いもの大好きなので。」
「……もう明希ちゃんどこまでも可愛いんだけど。」
そう言う翔也に呆れ顔の琉は2階に洗濯物を取りこみに行く。
「……木之本さんって、明希のこと好きですよね……?」
2人になったタイミングを見計らったかのように、恋がそう聞いてきた。
「……まじか、バレた?」
「俺。昔から人の恋愛事情には聡いので……」
(自分のはだいぶ鈍感なんだね……)
翔也は言葉を飲み込む。
「言わない、んですね。」
「……うん。」
「木之本さんは、本気で明希のこと好きなんですね。」
「うん。明希ちゃんと、ちゃんと向き合いたいから。だから、明希ちゃんが自分から俺の方見てくれるまでは、キスもセックスもしない。好きとも言わない。」
(本当は、好きって言えたらなって思うけど……)
「……2人とも!やばい!!明希くんもうすぐそこにいる!!」
琉がバタバタと降りてきて、そう伝える。
「うっわまじか!早くこれ隠しましょう!」
キッチンに広げっぱなしのケーキ類や下準備を終えた食事を慌てて冷蔵庫にしまう。
そして用意しておいたクラッカーを出してきたところでちょうどチャイムがなった。
「はーい!……よし、行きますよ。」
3人はクラッカーを持ち、玄関に向かう。
恋が鍵を開け、ドアを開ける。
「いらっしゃい。」
「うわ、みんないる。」
明希はそう言って少し驚くと笑い出す。
「なに?揃ってお出迎えなんて……うわ?!」
パンパーン!と音がなり、クラッカー特有の匂いが鼻をつくがそれすら幸せに思う。
「明希ちゃん、誕生日おめでと!」
「……へ?」
「あーもう、今日何日?」
「10月24……あ!」
「おめでと、明希。」
「おめでとう、明希くん。」
「……やばい、超嬉しい。」
明希はそう言うとふわりと笑った。
翔也はそれを見て、胸がドクンとなるのを感じた。
19時。
「んー!うまいっ!」
「そりゃよかった。」
早めの夕食を終え、ケーキを頬張る明希。
その姿はなんとも可愛らしく、翔也はそれを見ながら微笑んだ。
「さすがれーんっ!」
「今明希が食ってるやつは木之本さんが作ったやつだけどな。」
「え!まじで?!おいしいー!木之本さん、料理からきしダメって言ってたのに!」
「恋くんに教わりながら作った。」
翔也は照れ臭そうに笑う。
「嬉しいです……ありがとうございます。」
そう言って笑った明希の顔は、今まで見たことがないくらい、自然な柔らかい笑顔で、翔也は驚いた。そして嬉しかった。
「んー、本当幸せ。」
「甘いもの食べてる時の恋と明希くんはほんっとに幸せそうな顔してる。」
「え、俺も?」
「え?無自覚?」
「恋は紅茶とそれに合う甘いもの大好きだもんな。」
明希がクスクス笑いながらそう言う。
「それは言わなくていいって。」
「紅茶好きなら言えよー!甘いもの好きなのも最初教えてくれなかったし。パンケーキ作らなかったら多分今の今まで知らなかったし。」
「紅茶は結構好きなのわかりやすかったと思うんですけど……」
「毎日飲んでるもんなー。」
「言われてみれば。」
「こいつまじで鈍感なんだよ。」
翔也はクスクス笑う。
「ふふふっ!」
突然笑った明希にみんな目をやる。
「どうした?」
「なーんか、幸せーってこういうことかなって、すごい今思った。」
「なんだそれー。」
「俺、恋と友達でよかった。木之本さんとか、赤津さんに会えてよかった。本当に、本当に。」
明希は心の底から微笑んでいる。翔也はそんな気がした。
「んじゃ、もっと幸せになってもらいましょうか。」
「んだな。」
「ん?」
恋と琉が顔を見合わせ、足元から紙袋を取り出す。
「ん。誕生日、おめでと。」
「俺と恋からな。」
「ぷ、プレゼント?!この食事がプレゼントかと思ってたぞ?!?!」
「そんなわけあるか。」
恋がそう言って笑う。
「開けていい?!」
「どーぞ。」
「ふぉぉぉぉ!可愛いっ!」
猫のキーホルダーと、猫のペアマグカップ。
これは、まさか。
「これ、木之本さんとお揃いでいいの?」
「他に誰が……?」
「えへへー……嬉しいー。」
明希は口元を緩める。
(んもうやばい!!なんでこんなに可愛いのこの子は!俺の理性を試してるの?!)
「つーか、言えよー。そういうことしてんならさぁ。俺にまで黙ってるとか。」
「サプライズの方が面白いだろ?」
「もー……あ、明希ちゃん、俺からは後で渡すから。」
恋の気遣いで、泊まる部屋は同じ。翔也はそこで渡すと決めていた。
「ありがとうございます!」
そのあと少しの間、話をして、4人はそれぞれお風呂に入ったり、後片付けをしたりした。
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