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episode.42 今は言えない
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〜翔也side〜
22時。
あれから入浴を終え、4人で雑談したあと、翔也と明希は部屋にいた。
琉と恋の隣の部屋だ。
「明希ちゃん。」
翔也は明希を呼ぶ。
手招きして、ベットの、自分の隣に座らせた。
明希はちょこんと座っていて、翔也は抱きつきたい衝動をなんとか抑えて、置いておいた袋を取る。
「誕生日、おめでとう。」
袋の中から箱を出し、それを明希に渡す。
「開けても……?」
翔也はこくりと頷く。
明希は包装を丁寧に解き、箱を開けると目を見開いた。
「ごめんね、なんか、重くて。別に縛り付ける気は無いんだけど……その、俺の勝手な心配とかも含んでるんだよね。」
翔也はそう言って笑う。
渡したのは指輪だった。それも、明希の誕生石、オパールが小さくはめ込まれているものだ。
指輪をつければ、傑のような男達に手を出されることは無いんじゃないか、とか、多少の相手避けになるんじゃないか、などと考えての結論である。
何より、翔也の好きという気持ちが、これ以外のプレゼントには落ち着いてくれなかった。
「……受け取ってくれる……?」
翔也が何も言わない明希に心配になり、そう尋ねると、明希が俯く。
嫌だったのだろうか。やはり縛り付けすぎたか。
「っ、うっ……うっ……」
「あ、明希ちゃん?!」
明希は嗚咽を漏らして泣き始めた。
そんなに嫌だったか。これは失敗したな、と翔也は思った。
「ごめんね?」
「ちが、くて……そ、じゃなくて……」
明希は必死に何か伝えようとしてくる。
翔也は背中を優しく背中をさする。
「ゆっくりでいいよ?」
「うっ、っ……うぅっ……」
明希は涙を止めようと必死なのだろう、溢れてくる雫を手で拭う。だが次から次へと雫は溢れ、とどまるところを知らない。
「お、れ……その、嬉しくて……」
それでも明希は言葉を紡ぎだした。
「き、のもとさんが……く、れたの、が、う、れし……」
「明希ちゃん……」
明希は翔也の方に手を伸ばしかけ、やめる。
明希は無意識だろうが、翔也はそれが辛かった。
「……ワガママ、言っていいんだよ?甘えていいんだよ?俺、明希ちゃんの彼氏だから。」
明希は真っ赤な目で翔也を見る。
「それに今日は、誕生日だからね。」
翔也はそう言って優しく微笑んだ。
「………………さい……」
それはとても小さな声で、本当に弱々しくて、聞き取ることができないほどだ。
「ん?」
「ぎゅ、って……して、ください……」
明希はそう言って顔を伏せる。
翔也は眉をハの字にして、でも微笑んだ。
そして優しく明希を抱きしめる。
すると明希が自分から頬を摺り寄せてきた。
抱きしめるなんて、恋人にとってはなんでもないことなのかもしれない。だが、翔也にとって、これは特別だった。
明希が初めて、してほしいことを言ってきた。これほど嬉しいことはない。
「明希ちゃん……」
好き。好きだよ。大好き。
そう思っても、言葉は出てこない。
明希の全てを受け止めると決めたから、明希がこちらを向くまでは。今は、言えない。
好きと言える日が来ることを願い、翔也は明希を抱きしめ続けた。
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