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episode.43 事故
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〜琉side〜
12月26日
「恋!!恋!!!しっかりしろ!!」
無機質なモニターの警告音。
「離れていてください!」
バタバタとざわつく病院。
「恋!!恋!!!!!」
ストレッチャーを追いかけ、必死に声をかける。
「琉!」
翔也が無理やり琉を引き止める。
翔也の後ろには青ざめた明希の姿もある。
「落ち着け。お前が取り乱してどうする。落ち着け。」
廊下の突き当たりの一室に、手術中というランプが点灯する。
「はぁ……はぁ……」
琉は走ったのだろう、肩で息をする。
そして、目線を下に移し、自分の手を見る。
「とりあえず、手洗ってこい。」
血だらけになった自分の手。
琉の鼓動はどんどん速くなる。
「……翔也っ、どうしよう……俺、俺……」
「大丈夫だ。大丈夫だから。落ち着け。」
琉の肩を掴み、幼子をあやすように優しく言う翔也。
「なにが、なにがあった?」
「恋と待ち合わせしてたんだ。今日は、2人で、出かけようって……」
昨日は琉の誕生日だった。
昨晩、4人で集まり、お祝いをしたばかりだ。
形はともあれ、恋人なのだから、2人で出かけるのもいいのでは、ということになり、翌日デートをすることになったのだ。
「交差点の角が……急に騒がしくなって……人が轢かれたって、それで……」
それ以上は喋れなかった。
「……車のナンバー。」
「え……?」
「車のナンバー見たか?」
「車は、轢いた後……電信柱にぶつかってて……めちゃくちゃだったが……ナンバーは確か……」
琉は車のナンバーを伝える。
「……烏沢と、裏で繋がってるっていう暴走族が、ついこの前盗んだ車のナンバーだ。盗車だ。」
「…………烏、沢……」
「ごめん。まさかこんなことになるまで、烏沢が、恋くんのことを消したがってると思わなかった。俺の読みが甘かった。」
「翔也のせいじゃねえよ……」
「事故の証拠はまた隠滅だ……クッソ!9年前と同じになる!」
「させてたまるか……恋のためにも、今回は隠滅させない。なんとしても……」
琉は手術室の方を見やる。
「……恋っ、俺まだ……お前に言ってないことが、あるんだよ……」
「琉も、明希ちゃんも……今は座って。静かに待つしかない。」
3人は、手術室のそばのソファに腰掛けた。
「なんでこんなことに……」
明希がポツリと呟く。
なぜこんなことになったのか。
それは10月に、翔也の元に父親からかかってきた電話の内容が大きく関わっていた。
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