アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
episode.54 今言いたい
-
〜明希side〜
「はぁ……」
明希は病室でため息をついた。
こんなことになってしまうのなら、25日に言わせるべきだった。
そんな後悔が明希を支配する。
自分から赤津に伝えてしまうこともできる。でもそれは意味がないし、恋のためにもならない。
「恋……」
明希は恋の名前を呼びながら、眠りに落ちた。
「ん……?」
明希が目を覚ましたのは早朝5時頃だった。
明希の肩には毛布がかけられていて、誰か来たのがわかる。
(木之本さんかな……)
「あ、明希ちゃん、起きた?」
病室に木之本が入ってきた。
「木之本さん……赤津さんは?」
「さっきやっと寝たんだ。ずっと泣いててさ……」
「木之本さんも寝てないんですね……」
「明希ちゃんも、毛布もかけずに寝て。風邪引くよ?」
木之本はそう言って明希の頭を撫でる。
「ちゃんと体休めとかないと。ね?」
明希は素直にこくりと頷いた。
「あ、の。」
再び立ち上がろうとした木之本を呼び止め、明希は木之本の服を掴んだ。
「どうした?」
「木之本さん……俺、言いたいことが、あります。」
2人は病室の外に出る。まだ朝早いからか、誰もいない。
(言わなきゃ……絶対後悔する。言いたいんだ……ちゃんと、好きだって……)
「明希ちゃん。大丈夫だから、ゆっくりでいいよ。」
明希は一度深く息を吸った。
「木之本さん……俺、ちゃんと言いたい。本当は、恋が目覚めてからって……でも、今、言いたいんです。」
「なにを……?」
「俺……木之本さんが、好きです。」
明希は小さな声で、本当に消え入りそうな声でそう言った。
「……あ、きちゃん……」
「好き、好きです……」
明希は目から涙をポロポロとこぼして、何度も繰り返す。
「好き……好き、大好き……」
一度言葉にしてしまったその気持ちは、止まることを知らなくて。
涙が溢れて止まらない。それでも、震える声で、明希は続ける。
「好きなんです……迷惑でも、木之本さんに嫌われてても、好き……!」
木之本も涙をこぼしていた。
「……っ明希ちゃん。」
木之本は優しく、明希を抱きしめる。
「好きっ……好きっ、す、きっ……」
明希は木之本を抱きしめ返し、泣きながら繰り返す。
「……今、言わなきゃ、恋みたいに……突然、あんな風になったらっ……どうしようって……き、のもと、さぁんっ……」
明希はぎゅっと木之本を抱きしめて、泣き続ける。
今までの不安を、全て吐き出すかのように。
溜めていた涙が、溢れて止まらないかのように。
「明希ちゃんっ……好きだよ。ずっと、言いたかった。好きだよ。明希ちゃん。明希ちゃんが好き。」
木之本は優しく、でも力強く、はっきりとそう言った。
「うっ……ぁぁぁぁっ……!」
明希は堰を切ったように、泣き出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 832