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episode.57 ぬくもり
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〜琉side〜
「……忘れてる……?」
恋に事情を説明すると、恋は不思議そうな顔をした。
「明希、本当?」
どうやら琉の言っていることを疑っているらしい。
「うん、本当。ついでに言うと、木之本さんは俺の彼氏。」
「……………………え?」
盛大に間を空けて恋は聞き返す。
「だから、俺の、彼氏。」
「え?……え?」
恋は完全に混乱状態だ。
「あ、と……ちゃんと、俺の、好きな人……だから。」
「……待って、マジでついていけてない。何の話?というかその、この人たち俳優の、人たちだよね?本当に俺と知り合いなの?」
「知り合いどころか、赤津さんは恋の恋人だよ。まあ色々条件付きだけど。」
「……待って。時間をくれ。」
かくかくしかじか、詳しい説明を明希がする。
「……まだわかんないけどわかった。状況は、わかった。で、えーと、木之本……さん?その、明希のことよろしくお願いします。」
「う、うん!」
「で、明希。ちゃんと全部話したの?」
「いや、俺からはまだ話してないことある。だって、好きって言ったの今朝だし……」
「……お前今日爆弾発言多すぎ。お前から告白とか聞いてない。」
「それは記憶があった時の恋も知らない。」
恋と明希の繰り広げる会話に、全くついてけなくなった琉は、翔也をつつく。
「なぁ。これ俺も知らない話が入ってるんだけど?」
「あ、そうでした。」
翔也がえへ、と笑う。
「……もうめんどくさい、ここで全部話せ。」
恋がついにそう言った。
「はい?!」
明希はそれに驚きの声を上げた。
「だってさっきの説明の仕方だと、赤津さん?とも仲いいんだろ?それに、まだ言ってないってことは言う気なんだろ?」
「そ、そりゃそうなんだけど、今はそれより大事なことがあるっていうか……」
明希にも医者から言われたことは説明した。明希にとっては恋の記憶が戻ることの方が大事らしい。
「俺が忘れてる半年で何があったか知らないけど……でも、明希が自分からちゃんと好きになった人、傑以来初めてじゃん。これ以上大事なことがどこにあんの?」
「明希くん、嫌じゃなかったら……とりあえず話してよ。恋の気も済むだろうし。」
「赤津さんがそう言うなら……」
明希はポツリポツリと話し始めた。
一度は恋から聞いていた話だが、改めて本人の口から聞かされると傑には殺意が湧いてくるし、明希の親にも無責任だと言ってやりたくなる。
明希が話している間、ずっと翔也が手を握っているのを見て、琉はおもわず微笑んでしまった。
「……です。はい。以上!おしまい。」
「待って、まだ聞いてないんだけど?今朝の詳しい話。」
「あぅ……それは……」
途端に顔をりんごのように赤くする明希。
それを見た恋は心底驚いた顔をしていた。
「その……恋が、事故に遭って……不安になって、木之本さんも、こんな風になったらどうしようって……そしたら、止まんなくなっちゃって……」
「……なんかごめん。」
「いや!恋は悪くないし、むしろ恋のおかげでちゃんと言えたから……ありがと。」
「……事故に遭ってお礼言われると思わなかった。」
「ま、そういうわけだから、とにかく恋くんはゆっくりでいいから記憶戻していこうね。」
翔也がそっと話を戻す。
「は、はい。」
「無理すんな。恋人だったからって、そういうことしろとか言わないから。恋が嫌がることはしないよ。」
「は、はぁ…」
恋は気の抜けた返事をする。
「……あ、やばい、忘れてた。俺ちょっと電話してくるわ。」
翔也はそういうと病室を出て行く。
「あ、そういえば、恋は怪我が治るまではとりあえず入院ね。」
明希が説明をする。
「え、まじかよ。仕事とか……」
「あー、ほら、今、年末だから。撮影はないよ?」
「……そうだ、半年飛んでるんだ……」
「赤津さんはまだ仕事残ってますよね?」
琉はそう言われて頷く。
「つーかむしろ、俺と翔也はこれからの方が忙しい。年末年始の特番が今年は多くてさ……」
「俺はもう冬休み入ってるから、なんかあったら俺に言って。」
「わかった。」
「ていうか恋、本当に事故に遭ったの?ってくらい元気じゃない?」
「体は痛いけど……意識は割とはっきりしてるからな。」
琉は恋の言葉を聞いて少し安心した。
記憶がないとしても、恋が無事なことが1番だ。
「あ、の、赤津さん。その、忘れてて……ごめんなさい。」
「謝ることない。今は怪我治すことに専念しろよ。」
琉は、そう言って、優しく頭を撫でた。
そして恋のぬくもりを感じた手を、琉はそっと握り締めた。
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