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episode.59 笑顔
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〜明希side〜
それからしばらくして、13時頃、赤津が戻ってきた。
「恋、着替えはどうする?一応頭通さなくても着られるやつ選んできた。翔也もうすぐ着くって言ってるけど。」
「着替えたいです。」
「ん、足は動かしちゃダメだから、下はこのままな。」
恋は頭に包帯を巻いていて、腹部にはまだ傷が残っている。足は骨折したらしく、しばらくは動かせないそうだ。
「着替え手伝います。」
「助かる。」
赤津と2人で恋を着替えさせたところで、病室がノックされた。
「どうぞ。」
「お待たせ。」
翔也が帰ってきたらしかった。
「あら、琉くん。」
そう声をかけたのは、おそらく木之本の母親だろう。
「ご無沙汰してました。」
赤津がぺこりと頭をさげる。もちろん明希も立ち上がる。
「この前はお世話になりました!」
「明希くんもいたのね!貴也、明希くんいるわよ。」
「まじ?!明希さーん!!!」
病室の外にいたのだろう、ちらりと中を覗いて明希を認めると中に入ってきた。
「おー!」
貴也が明希に抱きつく。
「あー……えーと……?」
「あ、ごめん、恋。この、今俺に抱きついてるのが木之本さんの弟の貴也くん。中学生だよ。そんで、そっちの綺麗な人が木之本さんのお母さんの瑞貴さん。」
「あ、恋さんですか?!」
貴也が勢いよく恋の方を向く。
「お、おう。」
「うわぁ……明希さんに負けない美人……」
「それは、どうも……?」
「こら、貴也。病人に絡まない。」
「翔兄さんがいつもお世話になってます。」
木之本の制止を無視した貴也はそう言ってぺこりと頭を下げた。
「相変わらず元気だなぁ。」
赤津がそう言って笑う。
「少しは落ち着きなさい。」
「まったくだわ。恋くん?ごめんなさいね。明希くんと琉くんに会いたいって聞かなくて。」
木之本と瑞貴は困ったようにそう言った。
「いえ、構わないですよ。」
恋はそれに笑って返す。
「琉さんの彼女?」
「貴也、お前なぁ……」
木之本は呆れて溜息をついた。
「ま、そんなとこだ。」
赤津はそう言って貴也をワシャワシャと撫でた。
「いーなー、美人さん!ご馳走様です!」
「……ご馳走様?」
恋は貴也の言葉に首を傾げた。
「あ、えー、これは言ってもいいのかな?」
明希は貴也の方を向いてそう言う。
「いいですよ。俺別に隠してないし。」
「貴也くんはいわゆる腐男子ってやつだから。」
「ほ、ほう……それに俺はどう反応したらいいんだ?俺はそういうの詳しくないからわからんぞ?」
「へーそうなんだ、程度で大丈夫っす!あ、ちなみに俺も翔兄さんと同じくバイなんで。」
「そ、そうか。」
「余計な話はしなくてよろしい。」
木之本が貴也の肩を小突いたところで扉がノックされた。
「青木さーん、お食事です。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
看護師はさっさと出て行く。
「それじゃ、みんなも食事にしましょうか。」
瑞貴がサンドイッチとスープを取り出す。
「恋、腕痛くない?」
「はい、大丈夫です。」
「んじゃゆっくり食えよ。」
「……きゃぁぁぁ!琉さんイケメンか!」
「貴也……あんた少し落ち着きなさい。」
「恋くん本当にごめんね……」
瑞貴は貴也を叱り、木之本は申し訳なさそうにそう言った。
「……ぷはははは!あははは!ふふふっ!あははは!」
「え、恋?!」
恋が突然笑い始めた。
「こんなに賑やかなの、久しぶりです。」
恋はそう言い、まだクスクス笑っている。
「はぁー……こんなに笑ったのも久しぶりだ……」
確かに、恋が記憶をなくしている期間でも、恋がこんなに笑ったことはない。
むしろ、明希の記憶の中で、恋がこんなに楽しそうにしていたことはあっただろうか。
「……れぇぇぇんっ!!俺、恋のこと好きだからな!!」
「はぁ?!」
明希はぎゅうううっと恋に抱きつく。
「ちょ、明希!痛いから!!」
「ごめん!でも好き!」
「意味わかんないし!」
「お?お?翔兄さんのライバルは恋さんなのか?!」
「こーら!!なんでもくっつけようとするのやめなさい!」
ニヤニヤとしながら言う貴也を木之本がまた小突く。
「あー、恋好き!」
「もう、しつこいから!」
恋はそう言いつつも嬉しそうに笑っていたように、明希には見えた。
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