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episode.63 動き
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※時間が遡りますので日付にご注意してお読みください。
〜紘side〜
12月24日 烏沢邸
「兄上、このような日に私に座を相続してくださったことを感謝いたします。」
俊蔵の兄、真澄は、俊蔵の言葉にうむ、と頷いた。
この場には俊蔵の息子である紘、それから真澄の養子、聖川千秋(ひじりかわちあき)の姿がある。
「俊蔵、今後は烏沢のことはすべてお前に任せる。紘や千秋にも色々教えてやりなさい。」
「はい、兄上。」
紘からしてみれば迷惑この上ない話だった。
紘は裏社会に興味などなければ、富や権力もどうだっていい。
正直、恋を手にかけようとしている父親を軽蔑している部分もある。
千秋は感情の読み取りにくい男で、19歳。
恋と同い年だ。
「それでは烏沢の未来に乾杯。」
真澄がワインの入ったグラスを掲げ、そう言った。
「乾杯。」
「紘、千秋。」
「……乾杯。」
真澄に呼ばれ、紘は渋々言葉を発したが、千秋はなにも言わず、ジュースのグラスを掲げただけだった。
*
食事会を終え、紘は自部屋に入るとため息をついた。
俊蔵が烏沢の当主になったからには、恋の始末が実行されることだろう。
(俺にはどうしようもできない……か。)
紘は髪をサッと掻き上げ、椅子にもたれかかった。
その時、扉がノックされ、紘は身構える。
俊蔵かもしれない。
「はい。」
「千秋です。紘さん、今いいですか?」
だが扉の外から聞こえてきたのは千秋の声。
どうしたというのか?
「どうぞ。」
「失礼します。すみません、お忙しかったですか?」
「いや、大丈夫だけど。どうした?」
千秋が紘の部屋を訪れることなどほぼない。
なにか急用だろうか。
「……青木家について、お聞きしたいのですが。」
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