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episode.65 俊蔵の思惑
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〜紘side〜
12月25日
「紘、千秋。」
俊蔵は朝から執務室に紘と千秋を呼び出してきた。
「これからの烏沢財閥、いや、私の狙いを話しておこう。」
俊蔵はそう言ってコーヒーを啜る。
紘と千秋は何も言わず、黙って話に耳を傾ける。
「すべては明日より始まる。」
すべて、とはどういうことなのか。
紘は疑問に思ったがそれを聞くことはしない。
「我々烏沢財閥は、レントラント王国に支援を開始することにした。」
レントラント王国といえば、日本と交易が盛んなローデンス国にほど近い小さな島国だったはずだ。
そしてレントラント王国についての悪い噂は後を絶たない。
人身売買や強姦事件が日常茶飯事という国だったはずだ。
そこに支援をするとは、一体どういう形でなのか。
「そしてレントラント王国は明日、ローデンス国に戦闘を仕掛けるそうだ。」
何か目的があるのだろうが、紘にはそれは読み取れない。
「それから、青木恋の始末を、明日決行する。つまり、明日よりすべてが始まるのだよ。」
俊蔵は楽しそうにニヤリと笑った。
「おい。」
そして近くの男を呼ぶ。
「車の運転手を手配してこい。青木恋は不慮の事故で死ぬのだ。車は適当に手配しろ。」
男は頷くと部屋を出て行った。
「紘、千秋。お前たちもことの行く末を楽しみに見ているといいよ。」
*
「どういうつもりなんだ?」
紘と千秋は紘の部屋に戻ってきた。
「まさか他国の悪事にまで手を貸すとは……そこまでは予想外でした。」
「まったくだ。これは簡単に失脚、とはいかなくなった。」
「しかしその分証拠が増えるということですから。車には細工をしておきます。恋さんに死なれては困りますから。」
紘と千秋は、恋の始末計画は変に邪魔するべきではないと結論付けた。
邪魔すれば、確実に恋が死ぬ方法を取り始める。そうなっては守るものも守れない。
車には細工を施し、死なないような工夫をする。
今の2人にはそれしかできなかった。
「頼む。あの子は……あの子には罪がないんだ。」
「青木家には罪はありませんよ。」
「そうだな。レントラント王国については俺が少し調べておく。」
「わかりました。お願いします。」
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