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episode.67 新年
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〜恋side〜
1月3日
「あー……呼んでくれたらやっと。やっとここ来れた。あけましておめでとう、恋、明希くん。」
「あけましておめでとうございます。」
「おめでとうございます!」
仕事を終えた赤津と木之本が病院にやってきたのは三が日の最終日の夜のことだった。
「新年から特番多すぎ。」
木之本はため息をつきながらそう言う。
「新年だから多いんじゃないんですか?」
「それもそうだ……あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「お願いします。」
少し遅い新年の挨拶を終え、明希がりんごをむき始める。
「りんごなんてどうしたの?」
「瑞貴さんが持ってきてくださいました。」
「え?!母さんいつ来たの?」
「昨日ですよー!」
「……俺なんも聞いてない。」
「たまたまこちらに用事があったそうで。急だったので木之本さんには言ってないと話してましたよ。」
「まじかよー!行ったっていう事後報告くらいしてくれてもいいのに。」
木之本はクスクスと笑っている。
「はい、ということでいただきましょう!」
明希が紙皿にりんごを切り分け、フォークを出してきた。
「ん、恋。」
なぜかフォークは3本しかない上に、赤津はなんのためらいもなく恋にりんごを差し出してくる。
「……明希?なんでフォーク3つしか出さないの?」
「えー?恋の腕が痛そうだから?」
「フォークくらい使えるっつの。ていうか毎日普通に食事してるし!」
「まあいいじゃん?ほら、食えよ。」
赤津は、あーん、とでも言いたげにりんごを恋の口元に持ってくる。
恋は観念して口を開ける。
しゃくしゃくとりんごを噛むと甘い香りが口の中にふわっと広がる。
(美味しい。でも恥ずかしい……)
「美味い?」
「はい。」
「ん、よかった。」
赤津は恋の頭をポンポンと撫でた。
恋は胸がきゅっとする感覚に襲われ、不思議に思う。
(なんなんだろう、この感覚……)
恋はまだ、この気持ちを自覚できずにいた。
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