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episode.69 来日
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〜琉side〜
1月15日
『本日、ローデンス国の次期国王である、ジル・フリークス王子が来日されました。』
テレビのアナウンサーがニュースを読み上げる。
「ローデンス国、ねぇ……最近毎日このニュースだな。」
「日本と交易が盛んな国ですからね。今赤津さんが飲んでる紅茶もローデンス国産ですよ。」
「あ、本当だ。そういえばローデンス国産の紅茶はどこ行ってもあるような……」
恋は退院して家に戻り、事故の前とあまり変わらない生活が始まっていた。
「そういや、骨折思ったより早く治りそうだって、鈴木先生が言ってたぞ。」
「それは助かります。何せ足なので……仕事に全くいけません。」
「ま、恋はこれを機に少しくらい休んだ方が良いんだよ。」
琉はそう言って頭を撫でる。
もはや恋の頭を撫でることがない日はないのではないかというくらい癖になってしまっている。
「……赤津さんってよく俺の頭撫でますよね。」
「ん、まあ……なんか、ついね。撫でたくなるんだよね。」
琉はそう言って微笑む。
「……なんですかそれ。」
恋は頬を赤らめて俯く。
(そういう反応されると、勘違いしそうになるなぁ……)
恋は自分が好きなのではないかという、都合の良い勘違いをしてしまいたくなる。
『ジル王子と側近、ジュエライドが宿泊するホテルは……』
恋に意識を向けないようにテレビに目をやる。
「へぇー……割とこの辺のホテルに泊まるんだな。」
「病院の方ですね。」
「つーかこんなことニュースで大々的に言って良いのかね?」
「その方が警備もしやすくなるからじゃないですかね?まあよくわからないですけど……」
「ま、俺たち一般人には関係ない話だよなぁ。」
琉が一般人かと言われると、少々怪しいところはあるが、少なくとも他国の王族とは違う。
「そうですね。あ、お昼なに食べますか?」
「そうだなぁ、なんかあるもんで適当に作るか?」
「そうしますか。」
「手伝うよ。」
「すみません。」
「怪我人が遠慮しない。」
恋の頭にはまだ包帯が巻かれていて痛々しい。
「恋、なんかあったらすぐ連絡しろよ?」
「最近そればっかりですね。」
恋はクスリと笑う。
「心配なんだよ。わかったな?」
「わかりましたよ。」
(……記憶、戻ってくれよな。お前に、ちゃんと伝えたいんだから……)
琉は思ったことを打ち消すように恋が出した野菜を刻み始めた。
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