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episode.87 証拠
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〜紘side〜
1月19日 夜20時
「紘さん!大変です!」
「どうした?」
「恋さんが、ローデンス国の王子と接触しました。」
「なんだって……?」
自部屋にいた紘のところに慌ててやっててきた千秋が告げたのは、驚くべきことだった。
「今日、俊蔵様は、ローデンス国のジュエライドのΩ4人を連れ去るように指示を出していたんですが、どうやらその4人を助け出したのが恋さんなんです。しかも、恋さんの友人も連れ去られてたんですけど、そちらはジュエライドの方が助け出して……その結果、ローデンス国の王子と接触することになったようです。」
紘は、まずいことになったと思った。
ここ最近の調べでわかったのは、俊蔵はレントラント王国と共謀してローデンス国を征服しようとしている。
今日4人を連れ去る指示を出したのは、あくまで王子の反応を見るためだったはずだが、恋が関わったとなると落ち着いてもいられないだろう。
「でも、そのおかげで、いい証拠を手に入れられました。」
千秋は今日、俊蔵の側近の男を尾行していた。
「音声の録音です。男がしっかり俊蔵様の名前を出してくれました。さらに笹倉傑からも音声取れました。」
俊蔵の部屋と車には盗聴器を仕掛けた。それも録音機能が付いていて、一定時間ごとに紘のパソコンに音声データが送られてくるようになっている。
「よし、あとは決定的な証拠さえ……せめて恋の記憶が戻れば……!」
9年前の事件も摘発するためには、恋の証言が不可欠。
もう1人の目撃者は紘がいる。
「紘さん、1つ提案があるんですが……」
「なんだ?」
「赤津さんと木之本さんにも、我々の考えを伝えることはできませんか?」
紘は少し考えた。
もし、接触したことがバレれば今までの計画は台無し。だが接触して、もしも2人に協力を要請できれば、ローデンス国を通じてレントラント王国との癒着の証拠が手に入るかもしれない。
ハイリスクハイリターンだ。
「……よし、彼らの事務所に行こう。」
「音声データ、持って行った方がいいかもしれないです。烏沢の人間だと言ったら、彼らには警戒されるでしょう。」
「そうだな……よし、明日の昼だ。彼らの事務所に行って、話はそれからだ。」
紘の言葉に千秋も頷く。
「……それから、1つ、重要な切り札があります。」
「切り札?」
「確実に、俊蔵様を失脚させられるでしょう。」
紘は不思議に思った。それがあるならどうして出さないのか?それをすぐに出してしまえば、今すぐにでも失脚させられるのではないか。
「もし、もしもこの先、追い詰められることがあったら、それを使いましょう。僕の部屋の机の引き出し、鍵のかかっているところにUSBが入っています。もし僕に何かあったら、紘さんが取り出してください。」
「鍵は?」
「これ、です。」
千秋がそう言って出したのはチェーンについたリング。
少し古びていて、少し昔のものだとわかった。
「何かあったら、渡します。」
「わかった。」
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