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episode.92 拘束
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〜明希side〜
1月30日 17時
明希は買い物のためにスーパーに向かっていた。
それは特に代わり映えのない、いつも通りのことだった。
翔也や赤津は仕事、恋もファミレスのバイトに復帰し、元の日常も戻りつつあった。
(今日は何作ろうかなぁ……)
明希の左薬指にはオパールのリングが相変わらずはまっていて、変わったことといえばそれが婚約指輪という名前を持つようになったことだろう。
そんな薬指をちらりと見て、口元の緩む明希の前に立ちはだかる人影があった。
「……?あ、えっと、すいません。」
明希は自分が邪魔になってしまったのかと思い、避けようとする。だが目の前の男は明希を行かせまいとする。
「ついてきていただけますか?」
明希は背筋がぞくりとするのを感じ、恐怖から動けなくなっていた。
あたりは人通りがなく、住宅街でもあるため誰にも見つからない。
明希は震える足を必死に後ろに引っ張る。
だが後ろにも男がいた。
「おとなしくしていてくれれば、痛いようにはしませんよ。」
「……やだ……!」
明希がそう言った時、後ろの男がハンカチを当ててきた。
「んんっ……!んー!!……っ……」
(薬?!ふらふらする……)
明希はカクン、と後ろに倒れ、意識を手放した。
*
明希が目を覚ますと、そこは大きい部屋だった。
手首は鎖で繋がれて拘束されており、強制的につま先立ちをさせられているような繋がれ方だった。
(どこだここ……)
まだ意識がボーッとしていて、あまり頭の整理がつかなかった。
壁にかかっている時計を見ると20時だった。5時間も薬で眠らされていたことになる。
(なにがどうなって……)
「お目覚めかな、上原明希くん。」
(……?烏沢、俊蔵……?!)
「なんだよ。これ。」
明希は極力平静を装った。
「面白いだろう?これなら十分、青木恋を脅せると思ってね?」
(やっぱり目的は恋なんだ……!)
「お前……何考えてんだよ!」
「そうだなぁ、忌々しい9年前の事故、あれを全て片付ける時が来たのだ。青木恋が死ねば、全て終わる。私の犯罪は闇に葬られる。永遠に、な。」
(……どうしよう……!怖いけど、恋、こないで……!)
「しばらく君には、こうしておいてもらおう。」
俊蔵はそう言うと明希を置いて部屋を出て、鍵をかけた。
「恋……来ないで……来ないで!」
明希は1人、そう呟いた。
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