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episode.98 雷
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〜恋side〜
2月5日
俊蔵の逮捕から2日が経った。
既に初審が行われ、第二審は7日に行われることも決まった。異例のスピードだった。
連日俊蔵の悪事は報道され、烏沢財閥が不正な支援をしていたところは次々と潰れていった。
それは、恋の所属するAV会社、LOVECENTERも例外ではなく、所属していたAV男優たちは、他の会社を希望すればそこに移籍、辞めることも許された。
恋はAV男優は辞めることを決めた。
それは少し前に感じた嫌悪感や、もともとやりたくもなかった仕事だったということもあった。
烏沢財閥自体も解散となり、財閥が運営していた会社のみ、紘の管理のもとで残されることが決まった。
「……さて。暇だな。」
AVの仕事がなくなった恋は、今までより時間の空いた日々を過ごすことになっていた。
ファミレスRでのアルバイトは定時社員になることが決まったものの、そうすぐに入れるわけでもなく、しばらくはほぼ仕事のない状態だ。
恋は家事に取り組んでいる。
掃除をしたり、洗濯物を干したり、買い物に行ったり…
食事をしたり、なんだかんだとやっているうちに時間はあっという間に16時。
赤津は今日、仕事の帰りが17時頃になると言っていた。
(お風呂でも入れようかなぁ……)
恋はそんなことを考えながらちらりと窓の外に目をやる。
昼の冬晴れとは打って変わって雲は灰色で分厚く、雨でも降りそうだった。
(赤津さん、傘持ってったっけ……)
恋がそう思った時、雷がなった。
(……まじかよ。雷は、なぁ……)
恋は両親が亡くなってから雷が苦手だった。
雷の音を聞くと頭が痛くなり、恐怖心をやたらと煽られるのだ。
恋はソファに座りクッションを抱える。
雷の音は大きくなるばかりで、恋はクッションを握る手をぎゅっと強くした。
"あなた、前、トラックが!"
「……ぁ、あ……?」
突然、頭がズキズキと痛み出し、音声が再生されるように頭の中に響いた。
"こっちに突っ込んでくる!!璃子、恋、頭を下げろ!"
「あ、あ……や……いや……」
涙が溢れ、ガタガタと体が震える。
音声だけでなく、映像もチラつく。
恋の頭は混乱してきた。
"恋、こっちに!"
突然ふわりと抱きしめられるまだ幼い恋。
恋の頭の中にはそんな光景が浮かんでいる。
幼い恋の目の先には、トラックの運転手。近づくにつれて徐々に顔がはっきり見えてくる。
トラックは横向きに道路を塞いだ。
恋の呼吸は苦しくなっていく。
フラッシュバックしたように、鮮明に光景が思い浮かんだ。
"無理だ……!避けきれない!!"
"恋、愛してるわよ"
ドゴォォォォ!と一際大きな雷が鳴った。
「はっ、はっ……はぁっ……」
恋の頬には涙が伝い、ソファからずり落ちた。
「とう、さん……かあ、さん……」
恋の呼吸は荒く、涙が止まらなかった。
外はポツリポツリと降り出した雨が、あっという間に大降りに変わった。
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