アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編 紘と千秋 3
-
〜紘side〜
1月31日23時
千秋と父上の行方の手がかりは全くつかめなかった。
俺は気が変になりそうだった。
千秋が、千秋が見つからない。
"……紘さん。僕は、大丈夫ですからね。"
「クッソ……!」
千秋の壊れそうな笑顔とあの時の言葉が、頭から離れない。
どうして一緒にいなかったのか。
明希の無事を考えれば当たり前のことだった。そんなのわかってる。
でも、それでも、だ。
休みなくパソコンを叩き、あらゆる情報を収集しても、父上の潜伏先はわからない。
千秋にGPSでももたせておくんだった。
俺はパソコンから目を離し、瞼を閉じる。
俺にとって、千秋はただの同居人だった。
一応、父上の兄、真澄様の養子だから、俺にとっては叔父。でも年は下だからという理由で、千秋より俺の方が立場は上だった。
本当に興味なんてなかった。
でも、父上が当主の座につき、千秋と一緒に過ごすことが増えて、惹かれるようになった。
千秋と一緒にいるときは、無理せずに済んだ。
何かを押し込めたり、強がる必要がなかった。
俺は感情が顔に出る方ではないと思う。自覚もあるし、わざとそうしている節もある。
千秋といるときもそれは変わらないが、我慢しなくていいというのは、心にとってはとても楽なことだった。
いつの間にか、千秋の側にいる自分が、本当の自分なんだと思い知っていった。
そして千秋の側にいることは、心地よくなった。
たった1ヶ月。
でもその1ヶ月は俺の気持ちを変えて、自覚させるには十分だったらしい。
「千秋……」
千秋にまだ、伝えていない。
千秋にまだ、言えていない。
まだ、好きだと言っていない。
まだ、抱きしめていない。
したいことは山ほどあるのに、まだできてない。
俺は頬を手で叩き、もう一度パソコンに向かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
119 / 832