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番外編 紘と千秋 7
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〜紘side〜
2月3日 7時 俊蔵の逮捕から3時間後
「千秋……」
父上がついに逮捕された。
警察、主に木之本さんの父親、木之本浩也さんの指示による懸命の捜索の甲斐あって、今朝早くに捕らえられた。
都内の地下室に立てこもって、最後の最後まで千秋を盾にして出てこなかったらしい。
そして今、千秋は病院にいる。
千秋の体は、ボロボロだった。
あちこち傷だらけ、血だらけ。
目は虚ろで、何も見てない。
いくら呼んでも、反応してくれなかった。
今は睡眠剤で眠っている。
「失礼します。」
病室に、鈴木零先生が入ってきた。
千秋の担当医。千秋はマスコミや野次馬からの隔離のためにVIPルームと呼ばれる隔離病室に入院することになった。
「紘さん、少しお話いいでしょうか。」
そう言われたので、俺は病室の外に出た。
すぐそばにソファがあって、そこに2人で腰掛ける。
「もう少し、精密に検査をしないとわかりませんが……事件のショックで、耳が聞こえなくなっている可能性があります。」
先生はそのあとも、検査の説明とか、色々な話をしていたけど
そのほとんどは俺の耳に入ってこなかった。
先生がいなくなってからもしばらく、ソファから動けなかった。
千秋の耳が聞こえていない。
俺の声は届いていない。そういうことらしい。
どうしてもっと早くに助けてあげられなかったのか。
いや、そうじゃない。
考えるべきはそれじゃない。
これから先、千秋にどう接していくか。
千秋が、また、笑ってくれるようになるには
どうしたらいいのか。
俺は、千秋のそばに、いてやりたい。
そばにいたら、少しくらいは、何かできるんじゃないか。
少しして、もう一度鈴木先生がやってきて、千秋は色々な検査をした。
その結果わかったのは
やはり耳が聞こえていないということ。
それから声帯に異常は見られないものの、おそらく耳が聞こえないせいで、話すことができないということ。
事件の記憶がしっかり残っているせいで、パニックを起こす可能性があるということ。
それに伴い、暗所、閉所恐怖症の疑いがあること。
それから
俺のことを認識していないということ。
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