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番外編 紘と千秋 8
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〜千秋side〜
気がついたら病院にいた。
もう生きてても仕方ないのに。
延命処置をされる場所にいるなんて。
そう思ってたら、紘さんにすごく似てる人がいて
少しだけ驚いた。
でも紘さんは壊されたから。
これは紘さんじゃないんだなって思った。
そしたらすごく悲しくなったのに
涙は出なかった。
もう枯れちゃったのかな。
それともう1つ驚いたのは
誰が何言ってるのか全くわからなくなった。
耳が聞こえてないのかな。
音がしない。
音がしないから、自分の声も出せなくなった。
出し方が、わからない。
自分の耳に自分の声が聞こえないから
どうやって話すのかわからない。
鈴木先生っていう先生が、僕の担当医で
紘さんによく似た人が
ずっと僕のそばにいてくれてた。
なんでなんだろう。
この人はなんなんだろう?
紘さんに双子とかいなかったはずだし……
聞いてみたらわかるかな。
……いやどうやって聞くんだろう。
僕今話せないし……話せても聞こえない。
そういえば、手話を習ったことがあったっけ。
烏沢の人間になるからにはなんでもできなきゃダメだって、言われて、日常会話ができるくらいには覚えたなぁ……
"あなたは、誰ですか?"
……一応そう聞いてみる。
……で、今思ったけど、僕が手話できても、紘さんに似た彼が出来なければ意味がないんじゃ……
そう思ってたら、返事が返ってきた。
唇も一緒に、ゆっくり動かしてくれたから、すごくわかりやすかったんだけど
それ以上に驚いた。
だって彼は
"ヒロ"
と言ったから。
ヒロ、紘さんと同じ名前。
"ヒロさんはいくつですか?"
"28"
年まで同じ。信じられない。
顔も似てて名前も年も同じ。
"君は、聖川千秋、でしょ?"
すごい。僕の名前も知ってる。
ヒロさんは苗字まで紘さんと同じで
本当に同じ人かと思ったけど
それはありえないから、きっと別人なんだって思った。
でもヒロさんはすごく悲しそうな顔をしてて
僕も胸が痛んだ。
どうして、そんなに悲しそうな顔をするんだろう。
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