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episode.101 ライバル登場?
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〜恋side〜
「……どうぞ。」
恋は紅茶を出す。
「ありがとー!」
突然裁判所前に現れた小柄な男。
その男は半ば強引に恋の家にやってきて、現在は赤津、木之本がソファに座り、その前にその男。明希と恋は立っていた。
「……で、なんのつもりだ、小雪。」
赤津に小雪(こゆき)と呼ばれた青年に、恋は見覚えがあった。
「ごめんなさい……だってずっと会いたかったんだもん……」
小雪はそう言って赤津を上目遣いで、それも涙目で見つめる。
「……はぁ。まったく。で、いつ帰ってきたんだ?」
「あー琉?その前に2人にちゃんと説明してあげたほうがいいと思う。ていうか、説明して。明希ちゃんがめちゃめちゃ怯えてる。」
さすがは木之本だと恋は思った。
明希は恋の後ろに回り、実は背中の服の裾を掴んでいる。
明希は傑のせいで初対面の男の人にかなり怯える。
「ごめん。ほら、自己紹介。」
「藍井小雪(あおいこゆき)、21歳!ついこの前までイギリスに行ってたんだけど、今朝帰ってきて、その飛行機の中で琉さんと翔也さんが裁判所の傍聴席にいるって知って、すぐにそっちに行ったの!」
明希がぎゅうっと恋の服を掴む手を強くする。
「それから、僕は、琉さんのフィアンセだから。」
「は?」
「……え?」
「ん?」
赤津、恋、明希、3人ほぼ同時の反応だった。
「小雪ちゃーん……それいつの話よ……」
「まだ事務所に入ったばっかりの頃かなぁ。」
木之本の言葉に小雪は楽しそうに笑う。
恋は複雑な気持ちだった。
自分の知らない赤津の話。
当たり前だ。自分が出会ったのは記憶がないものの半年ほど前。その前には当然自分の知らない赤津がいる。
でも気持ちを自覚したばかりの恋には、気持ちを押し込める理由になってしまった。
小雪の話をもう少し聞いてみてわかったのは、小雪は赤津や木之本と同じ、フリーエンジェル所属の俳優で、イギリスで役者をやっていたが、今回一時的に帰国、夏頃にはまた戻るとのことだった。
「それで、これからどうするんだ?」
「んー……それが、急な帰国でホテルも何もなくて……しかも夏には帰るから向こうの部屋解約できなくて。だからこっちで部屋借りるのはなぁ……って感じです。」
「小雪ちゃんも大変だね……社長に呼び出されたの?」
「はい。でも琉さんに会いたかったし、良かったです。」
そう言って笑う小雪は可愛い、と恋は思った。
「でもほんと、居住地は困るっていうか……琉さん、泊めてくれません……?」
「今俺、恋と住んでるから……」
「あー、聞きましたよ?契約恋愛、なんでしょ?」
ケイヤクレンアイ
その響きは恋の頭にガンッと響いた。
木之本の眉間に皺が寄り、明希の服を掴む手が弱まった。
「……どこで聞いた。」
「社長から。」
赤津は、恋と恋人だったと言ったとき、色々事情がある、と言っていた。
でも、それが契約だったなんて。
「契約者は恋さんなんでしょ?だから琉さんは決められないってことだよね?」
「そういうことじゃ……」
「ね、恋さん。」
赤津の言葉を遮り、小雪は恋に話しかけてくる。
「僕がしばらくの間住むのは……困る?」
「構わないです。赤津さんがいいなら。」
恋は投げやりな気持ちだった。
今まで赤津が自分に恋人のような態度を取っていたのは、契約だったから。
仕事だったからだと思ったら、胸が痛くなってきた。
この胸の痛みを恋は今までに経験したことがなかった。
赤津は恋の言葉に少し悲しそうな顔をした気がしたが、恋は気のせいだろう、と思った。
それほどすぐに赤津の顔はいつも通りに戻った。
「わかった。いいよ。」
「ありがとうございます!」
恋たちの新しい日々が、始まろうとしていた。
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