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episode.104 バレンタインデー1
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〜恋side〜
2月13日 千秋宅
「…え、待って、なんでこうなったんだっけ。」
恋はそう呟いた。
*
2日前。
「約束通り千秋連れてきた。」
「千秋さん、初めまして。青木恋です。」
紘が千秋を連れて来たとき、赤津と小雪は仕事に出ていた。
"初めまして。聖川千秋です。"
「あ、千秋さんは手話使えるんですね。」
「恋、手話わかるの?」
「はい、少し勉強したことがあります。」
「そうだったのか!あ、で、早速で悪いんだけど、明日と明後日、千秋と一緒にいてくれないか?」
"1人で大丈夫ですよ?"
「ダメ、俺が心配だから。」
「わかりました。明日は夕方からバイトなのでそれまでなら。明後日は1日大丈夫ですよ。」
「それじゃ頼むな。」
そして翌日。
「お邪魔します。」
「お邪魔しまーす……」
明希も千秋に会いたいというので恋と一緒に千秋の家を訪れた。
"いらっしゃい。"
「あっ!この前は本当に本当にありがとう……!」
明希は千秋の顔を見るとそう言った。
"ううん。無事でよかった。心配してた。"
「千秋さんは、何歳なの?」
明希がそう尋ねる。
"19歳"
「同い年だね!」
「同い年だったんだ。」
"うん。だからタメ口でいいし、千秋でいい。"
「そっかそっか!よろしく、千秋!」
今3人がどうやって会話しているかというと、明希も恋も手話が使えるので手話と声と両方使っている。
口の動きはできるだけゆっくりにして、千秋にも読み取れるくらいの速さで話している。
"明希、木之本さんとはどう?"
「う、それが……最近小雪さんの話しかしないの……」
"コユキ……?"
千秋が不思議そうな顔で問い返してきた。
「あ、えーと、うーんと……今、恋の家に同居してる、赤津さんと翔也さんの事務所の後輩。」
明希は悩んでそう説明した。
"男?"
「うん……」
"どんな人なの?"
「すごく人懐こい感じの人……」
「多分……赤津さんが好きなんだよ、小雪さんは。」
「え、そうなの?」
恋の言葉に明希は驚いた。
「多分、ね。」
"……恋は、赤津さんが好きなんじゃ、ないの?"
「え……」
"僕、そういうのは目ざといよ。"
「言わないの……?赤津さんに。」
明希がそう言う。
「言えない……家では、小雪さん、ずっと赤津さんにべったりだし、最近生活時間も合わないし。」
"そういえば、明後日はバレンタインデーだよね?"
「そうだね……あ!」
明希は何かひらめいたような表情をした。
「なに、どうしたの?」
恋だけがよくわからないままだ。
"チョコ作って渡してみればいいんじゃない?"
「え?」
*
そして今に至る。
「……それでなんで貴也くんまで?」
恋はそう言いながら貴也に視線を移す。
「すいません、スーパーの前でたまたま明希さんと会っちゃって。話聞いたら行きたくなっちゃって!千秋さん、お邪魔してすいません!」
"別に構わないよ。"
「貴也くんも誰かにあげるの?」
「まあ、そんなとこです!」
千秋の家のキッチンに恋、明希、千秋、貴也の4人が立っていて、部屋中に甘い匂いが立ち込めている。
「テンパリングとかまでして、結構本格的ですね!」
「テンパリングって言葉を知ってる貴也くんがすごいと思うんだけど。」
"テンパリングって?"
「あ、温度調整のことだよ。チョコレートは高すぎる温度で湯煎すると風味が飛ぶから。一定の温度に保てるようにするんだよ。」
"へぇ……初めて知った。"
「……ところで、恋さんも明希さんも、なんか作ろうとしてるものがオシャレすぎるんですけど?!」
"確かに……お店で売ってるようなものだよね。"
恋と明希の隣に置いてあるレシピを見た貴也と千秋はそう言う。
「そう?」
「そうですよ!だって、なんですか、この、フォンダンショコラって!!」
「意外と簡単だよ?」
貴也は、フォンダンショコラを作ろうとしている明希を、信じられない、といった顔で眺める。
「俺なんて溶かしてコーンフレーク混ぜて固めるだけのつもりで……」
「中学生ならそれくらいで普通じゃない?」
"うん。そもそも恋と明希が料理のスペック高いだけ。"
「恋のは簡単そうに見えて結構めんどくさいんだよね、生チョコ!」
「手順は簡単だろ?温度調整がめんどくさいだけで。」
"そもそも僕何作って誰にあげるかも決めてないのにチョコレート溶かしてるんだけど。"
「トリュフでも作って、紘さんにあげれば?」
"ヒロさん?"
千秋の言っているヒロと恋の言っている紘の意味は違う。恋もそれはわかっていたが、そのまま話を続けた。
「喜ぶと思うけど。」
"そうなのかなぁ……"
「そうと決まれば頑張りましょう!!」
4人のお菓子作りは夕方まで続いた。
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