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episode.108 俺あの人嫌い。
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〜恋side〜
月日というのはあっという間に流れるもので、気づけば3月になっていた。
そして本日、3月14日19時の青木家は賑やかである。
「恋さん、これはどうします?!」
貴也がそう言いながら食材を見せる。
「え、うーん……」
「一緒に入れちゃえば?」
「あー、そうだな。」
恋が迷っていると、明希がそう言うので頷いた。
「……いつもこんなに賑やかなのか?」
「いや……多分貴也がいるからうるさいだけ……」
紘の質問に、木之本が苦笑いで返す。
「翔兄さん!聞こえてるからね?!」
青木家のキッチンにはエプロンをつけた恋、明希とそれを手伝う貴也、千秋の姿。
ソファの方に紘が買ってきたシャンパンを出し、飲み始めているのは紘、赤津、木之本。
今日はいわゆるホワイトデーというやつで、赤津たちから恋たちにお返しをする予定だったと言っていたが、結局みんなで集まってパーティーになった。
貴也がいるのは、千秋と明希が貴也も誘いたいと言ったからである。
「赤津さん、小雪さんはいつ帰ってくるんですか?」
「ん?もうじき着くって。」
恋の問いに赤津がそう答える。
「それじゃあそろそろ準備しましょうか。」
「やったー!鍋パだー!!」
冬、とはもう言えない暦だが、まだまだ外は寒く、鍋にはもってこいの日だった。
「たーかーや!落ち着け!少し大人しくしなさい。」
はしゃぐ貴也を捕まえ、木之本がそう言った。
「翔也の弟なのか。」
「はいっ!木之本貴也です!腐男子バイセクシュアルです!!」
紘の問いに貴也が元気よく答える。
「言わなくてもいいことを言わない。」
「賑やかだな。」
木之本が呆れた顔をすると、紘がクスクスと笑う。
「ほら、鍋出すから座って。」
「はーい!」
「……なんで兄貴より恋くんの言うこと聞くの?!」
「え、恋さんは萌えをくれるから!」
「え、俺もあげてない?」
「違うよ?くれてるのは明希さんだよ?」
「っぷふははは!」
紘が笑ったところで、千秋がくいっと恋の服を引っ張る。
"ヒロさんが、あんなに笑ってるの初めて見た。って今思っちゃったんだけど……僕よく考えたら彼とまだ1ヶ月くらいしか過ごしてないんだよね。"
「そんなことないよ。千秋は紘さんと、もっと一緒にいたんだから。」
恋は思わずそう言ったが、千秋は不思議そうな顔をするだけで、他の反応は見せなかった。
具材をテーブルに並べたところでインターフォンが鳴り、恋は玄関へ向かう。
「たっだいまー!」
「おかえりなさい。」
小雪はそう言う恋を無視して中に向かう。
恋はため息をつきながらも自分もリビングに向かった。
「ほんじゃ始めよー!」
「いえーい!!」
木之本の声に貴也が元気よく返す。
「あれー?かーわいいー!翔也さんの弟ー?」
「木之本貴也ですっ!」
「ふふっ!元気だねー!」
「ごめんな、うるさい奴がいて。」
「ぜーんぜん!むしろ賑やかで嬉しいです。」
そう言ってにっこり笑う小雪を見て、明希が固まる。
普通の男なら小雪に落ちそうなものだが、木之本は別のようだ。
「そっかそっか。明希ちゃん、何食べる?何入れる?シャンパン飲んでみる?」
「俺未成年ですよ?!」
木之本は明希にこれでもかと言うくらい構っている。
小雪を見て苦い顔をしていたのがもう1人、貴也だ。
だが特に何か言うでもなく、貴也は鍋をつつき始める。
「僕もシャンパン飲みたい!」
「お前酒弱いだろ。」
「一杯くらい大丈夫だもん。」
赤津にそう言われたが、小雪は頬を膨らませる。
恋はもう気にしないことにした。
「まあ少しくらい酔ってもいいんじゃないか?」
「紘さんがそう言うなら……」
赤津は年上に弱い。恋は小雪の分のシャンパングラスを出してきた。
「どうぞ。」
紘が小雪のグラスにシャンパンを注ぐ。
「ありがとうございます。優しいんですね。」
小雪がそう言ってにっこり笑う。
紘はおそらくこういう男に耐性がない。
そのせいか、お酒も手伝って、紘の頬は真っ赤だった。
それを見て隣に座っている千秋が、恋の服をぎゅうっと掴んだ。
そしてそれに気づいているのは恋と貴也。
貴也がさらに苦い顔をする。
「貴也くん?食べてる?」
だが明希にそう言われ、すぐに鍋に意識が戻ったようだ。
2時間後。
「えー!紘さん社長なんだー!」
「小雪、お前酔ってるだろ。」
「んふふー、酔ってないよー?」
「……酔ってるな。」
鍋が大方片付き、成人組はシャンパンを飲んでいて、恋と明希は片付けを、貴也は千秋とソファに座っていた。
いつの間にか紘の小雪に対する敬語も取れ、完全に打ち解けたようであった。
貴也はじーっと小雪を見つめている。しかしその目は厳しく、鋭い感じだ。
「んー……」
小雪が横にいた紘に寄りかかる。
それを見た千秋は今にも泣きそうな顔を恋に向けてきた。
当の紘はというと、酔っているのか、もともとそういう性格なのか、あまり気にしていないようだ。
そんな時、インターフォンが鳴り、貴也が反応する。
「母さん来たかも!!」
「今出るからまだ座ってていいよ。」
恋が手を拭いて玄関に向かうと、やはり外には瑞貴さんの姿がある。
「貴也くーん!」
恋がリビングに向かってそう叫ぶと、少しして貴也がやってきた。
「お邪魔しちゃったわね。」
瑞貴が申し訳なさそうに言う。
「いえ!千秋……あぁ隣人が、貴也くんとすごく仲良くなってて、むしろ良かったです。」
「そう。明希くんと翔也もいるの?」
「はい。呼んできますか?」
「いいわよ!また今度会えるから。それじゃ、私たちは帰るわね。」
「……ねえ、恋さん。」
貴也が突然真剣な顔をして恋の方を見る。
「どうしたの?」
「小雪さん、だっけ?俺あの人嫌い。」
「……え?」
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