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episode.124 悪者
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〜恋side〜
5月10日
「……うん、すごく綺麗。」
「本当……?」
「素敵ね。」
恋は明希のウェディングドレス、ではなく、タキシードの試着を手伝いに来た。
つい先日、実家と仲直りした明希は、とても幸せそうで恋も嬉しかった。
「当日はベールをつけていただいて、お好きなブーケをお持ちいただければ良いかと思います。」
明希が来ているのは真っ白なタキシード。
ウェディングドレスに見立てているらしい。
翔也が着る予定なのはグレーのタキシードのため、おそらく明希の白は映えるだろう。
「ありがとうございます。」
「いえ!UHグループのご子息と俳優の木之本様とのご結婚をプランニングさせていただけて、こちらも光栄です。」
菜々子がお礼を言うと、式場のスタッフはそう言ってにっこり笑った。
明希はその後、私服に着替え直し、菜々子と食事に行った。
恋も誘われたのだが断った。夕食を作らなければならないし、何も言ってきていない。
家に帰ると小雪が既に帰宅していた。
「おかえりなさい。」
「恋さんもおかえりー。どこ行ってたの?」
「明希と結婚式場に。」
「へぇ……まさか翔也さんがあんな子と結婚するなんてなぁ……」
小雪は少しバカにしたようにそう言う。
恋は怒りたい気持ちを抑えて水を鍋に入れて火にかけ、野菜の下ごしらえを始めた。
「暗い過去抱えてる人と結婚するとか、絶対大変だよね。そんなもんなくてさ、明るくて可愛い子との方が絶対幸せになれるのに。」
恋は自分のことならまだしも、明希のことをバカにするような言い方に腹が立った。
「小雪さんがどう考えてようと、明希と翔也さんが決めたことですから。」
「へー……でもさ、エッチもできないんじゃないの?あの子。そんなんじゃ愛想尽かされそうだよねー。」
「そんなことないと思います。」
「ふーん……恋さんもさ、腕にそんな傷作るくらい病んじゃってんの?」
小雪はキッチンにやってきて恋の左腕を指す。
もうほとんど傷はないが深く刺したところだけ、いくつか残っていた。
「琉さんも可哀想だよね。恋さんがそんな風になっちゃったらさ、離れたくても離れられないよ。」
小雪や言葉に恋の胸はズキズキと痛む。
「そういうのってずるくない?わざと傷なんか作ってさ。」
「わざとなんかじゃ……!」
「本当に?じゃあさ、死にたいと思ってたならなんで首とかお腹とか刺さなかったの?」
その時は何も考えられなかった。だからとにかく近くにあった自分の腕を、傷つけることから始めただけだったのだ。
「僕とさ、恋さんが怪我してたら、琉さんはどっちに先に駆け寄るかな?」
鍋の中の水が沸騰してきて、コポコポと音を立てる。
部屋はその音以外、静かだった。
「ねえ、恋さん、悪者になってよね。」
小雪がそう言った時、ちょうどドアが開くほどがした。
そして赤津の、ただいま、という声。
次の瞬間には、恋の目を疑うようなことを、小雪がしていた。
「っうぁっ……あっつい、あつい……!」
「小雪?恋?」
恋は固まったまま動けなかった。
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