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episode.125 後悔
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〜琉side〜
仕事を終えて帰宅した琉は、ガンッという何かが床に落ちた音を聞き、リビングに入った。
「っうぁっ……あっつい、あつい……!」
「小雪?恋?」
キッチンのところで小雪がしゃがみこんでいて、恋は立っている。
床には鍋が転がっていて、こぼれた水からは湯気が上がっている。熱湯だったに違いない。
「小雪?!」
小雪の足に、熱湯がかかったらしい。
「……あっ、琉、さんっ、あついっ……あついよっ……」
小雪は涙をこぼしながらそう言う。
琉は慌てて少し広めの調理台の上に小雪を乗せ、水が溢れるのも構わず小雪の足に冷水をかけた。
「どうしたんだ?恋、何があった?」
恋は呆然としていて何も言わない。
代わりに説明したのは小雪だった。
「急、にっ……恋さん、がっ……お湯、かけてっ……」
小雪は泣きながらそう話す。
琉はまさか、と思った。
恋に限ってそんなことをするだろうか。
「どうしてっ……そんなこと、するのっ……?僕、が明希、さん、の話っ……したからっ……?」
涙目でそう言う小雪。
(本当に恋が?)
「恋、本当なのか?」
琉がそう言うと、恋はビクッと肩を震わせる。
「恋、話さないとわからない。」
極力優しく、琉はそう言った。
「っ……ちが……」
「……っいた、いたい……」
恋が何か言いかけたのだが、小雪が琉の服をぎゅっと掴んでそう言った。
「とにかく病院行くか。恋、話は帰ってきてからな。」
琉はそういうと小雪を抱えて家を出る。
近くの道路でタクシーを拾い、病院へ向かう。
そのタクシーの中で零が以前教えてくれた仕事用の零の携帯に電話をかけた。
『……はい、もしもし。鈴木です。』
「赤津です。火傷した子がいて、診て欲しいんですが、救急に行ったほうがいいですか?」
『恋くんですか?』
「いいえ。」
『……そうですか。あなたが受付に行けば大騒ぎですから、裏口から入ってきてください。いつもの部屋で治療します。』
「わかりました。ありがとうございます。」
零は患者が恋ではないことに少し驚いたようだった。
琉は小雪の足に目を落とす。
小雪の肌は白い。熱湯を被ったのであろうところが真っ赤だった。
本当に恋がやったのか。
琉の頭の中はその疑問でいっぱいだった。
だが、恋がやっていないということは小雪が嘘をついているということになる。
でも一体何のために嘘をつくのだろうか。
琉にはわからないことだらけだった。
だが、琉は今になって1つ後悔した。
恋を1人で家に置いてきたことだ。
琉は少し心配になり、翔也に、軽く事情を説明して、恋の様子を見て欲しい、ということを伝えた。
翔也からはすぐに返事が返ってきて、それとほぼ時を同じくして、タクシーは病院についた。
「……そうですね、すぐに冷やしたんですね。これならきちんと薬を塗れば跡は残らないと思います。」
病室で小雪の火傷を見た零はそう言った。
「そうですか。ありがとうございます。」
「……恋くんは最近大丈夫ですか?」
「え?はい……大丈夫だと思います。」
「彼は自分の気持ちを内に秘めるタイプですから、気をつけてくださいね。感情を表に出すのがとても苦手な子です。利用されればすぐに悪者になってしまいますよ。」
零は意味深なことを言った。
そして小雪をちらりと見る。
そこで突然、琉の携帯が鳴った。
「あ、すみません……マナーにしてなくて……」
「構いませんよ。電話のようですから、出たほうがいいのでは?」
零にそう言われ画面を見ると翔也からの着信だった。
「もしもし……え?恋がいない?!」
琉は今ここに恋を連れてこなかったことを激しく後悔することになった。
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