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episode.148 太陽
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※「もう一度、僕を呼んで」のepisode.20-5、20-6とリンクしています。
〜恋side〜
「……頭痛い。腰痛い。尻痛い。全く記憶がない!」
恋は部屋のベットに寝転がったままそう言った。
部屋には明希、千秋、ラズ、クレア。
「昨日レンは間違ってお酒を飲んじゃったんだよ。」
クレアがクスクス笑いながらそう言う。
「……まじで?本当になんの記憶もないんですが。」
"なにも覚えてない?"
「……俺なんかやらかした?」
"昨晩……隣の部屋に……"
「え、そっち側も聞こえてたんだ。」
恋たちが泊まった部屋の隣には明希と翔也が泊まっていた。
"うん。あそこはヒート対策がされてるから、防音のはずなんどけど、昨晩窓が開いてたから……"
「……え?待ってまさか、え?嘘でしょ?じゃあこの腰と尻の痛みはそれ?え?待ってもう嘘でしょ。」
"……相変わらず独占欲すごいんだね。"
「あ、ほんとだ。」
千秋の言葉に、恋を見たクレアはトントン、と自分の首を指す。
恋はその辺りに手をやってカァァっと顔を赤く染めた。
「うちのαのみんなも独占欲は強いから、気持ちはわかるなぁ。」
「うんうん……俺なんか昨日、してないのにここに痕つけられた……」
明希は鎖骨のあたりの服を少し引っ張る。そこには赤い痕がある。
"クレアもなの?"
「俺?俺は……うーん、リヴィはうなじに痕付けるの好きみたいだけど……」
ラズの問いにクレアは困ったようにそう答える。
"この前ハンスさんとお風呂が一緒になって、全身赤い痕で……アレンさんすごいなって思った。"
"僕なんか夢で抱かれてたはずなのに、起きても痕があって驚いたよ。"
5人それぞれ話して、ラズ以外の4人が一斉に頬を赤く染めた。
「あー、うん、もうこの話やめて外行かない?」
クレアがそう言って話題を変えた。
"そうだ、今日まだ庭行ってない。"
「俺行けるかな……」
「あ、そうだね……難しいかな?」
恋はまだ腰が重たかった。
「でも行きたい……」
「まあ無理せず行ってみる?」
"きつかったら座ってればいいし。"
明希と千秋に言われて、恋は頷く。
「じゃあ行こう。」
恋はベットから降りて立ち上がる。
が、その足はまるで生まれたての子鹿というやつだ。
「……俺こんなんなったの初めてなんだけど……?!」
「歩ける?」
「うん、なんとか、まあ、慣れてきたし。」
ゆっくりながらも5人で部屋を出て、庭に出る。
「やっぱり初めての人くると怖がるんだね。」
"うん、そうみたい。"
クレアとラズがそう言って草陰に目をやる。
動物たちはそこに隠れて出てこない。
「……待って俺もう限界、座っていい?」
「あ、うん、座ってな。」
5人で座り込むと、徐々に動物たちが寄ってきた。
「あ、ウサギだ……」
恋の膝に1匹のウサギが乗ってきた。
"ウサギ好きなの?"
「えーと……赤津さんが、ウサギのぬいぐるみくれて……」
ラズの問いに恋は恥ずかしそうにそう答えた。
「レンって、リュウのことすごく好きだよね。」
「え?!」
「めっちゃ可愛いでしょ?!」
「うん。」
「俺は可愛くないよ……小雪さんの方が、可愛いし……」
明希とクレアに対し、恋は自信なさげにそう言った。
"恋、もう気持ち伝えてみたら?琉さん、ローデンスに移住するかもしれないんでしょ?"
「俺……迷惑かけてばっかりなのに言えない……」
"……あのさ、僕は、その、好きとか、よくわからないけど、伝えてみたほうが、いいと思う。後悔はしないために、言った方がいいよ。"
「それは俺も賛成。」
「うん、伝えてみた方がいいよ。」
ラズが言うとクレアと明希も賛同した。
"……僕は、伝えられない恋の気持ちもわかる。"
「千秋……」
"でも僕……今は、紘さんに、言っておけばよかったって思う。ヒロさんのこと見るたび、そう思う。"
"ヒロは2人いるの?"
「あー……それはー、んーとね……」
恋がどう説明しようかと迷っていると、ラズが納得した表情になる。
"あぁ……わかった。だからチアキは、クレアと同じ目してたんだ。"
「俺と同じ目?」
"クレアが、リヴィを認識してなかった時の目。今のチアキの目はそんな感じ。"
「ラズはよく見てるんだね。」
"なんの話?"
「なんでもないよ。」
千秋が不思議そうに首をかしげ、恋は混乱させないためにそう言った。
"でも最近……僕、おかしいんだ……ヒロさんのこと見てると、胸がきゅってなる。"
「……そ、それって!!!」
明希が興奮気味に食いつく。
"好き……なのかな?"
"チアキもレンも、一度気持ちをぶつけてみたらいいんじゃないかな?簡単じゃないのはわかるけど、失ってからじゃ遅いんだし。"
5人の間に沈黙が訪れる。
その時だ。
動物たちが擦り寄ってきて、5人は顔を見合わせた。
"まあ今は……多分、楽しむ?のでいいんだと思う。"
「ラズも楽しい?」
クレアがラズにそう聞く。
"多分、気分がいいから、楽しい、んだと思う。"
「じゃ、楽しいことしよう。」
恋はそう言うとウサギをそっと抱き上げて寝そべる。
「賛成。」
他の4人も同じように寝そべった。
「た、い……よ、う。」
「……千秋が話した!やっぱ話す機能はあるんだな。」
「この太陽、見て話したんだ。」
5人が見上げる空は青く広く晴れ渡っている。
「んー、なんか、幸せ。」
明希がそう言い、5人はまた顔を見合わせ、ラズ以外の4人はクスクスと笑いだした。恋には、ラズもほんの少し、口角が上がっているような、そんな気がした。
そんな5人を眺めて、幸せに浸っていたジルたちの視線に、5人はいつまでも気づくことはなさそうだ。
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