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episode.150 結論
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〜千秋side〜
「ひ、ろ……さ、ん。」
千秋は目に涙を浮かべて、リビングに戻った。
千秋が声を出したことに驚いたのか、紘が振り返る。
「千秋?」
(ああ、聞こえた。)
紘の声。
何度もなんども、願った。
もう一度、彼に会いたい。
もう一度、彼と話したい。
もう一度、彼の声が聞きたい。
あれほど願った人が、こんなにそばにいたなんて。
「ひ、ろ……さんっ……紘さんっ……紘さん!」
千秋は紘に抱きついた。
涙が溢れて止まらなかった。
だがそれを気にする余裕すらなかった。
あんなに思い焦がれた人が、目の前にいる。
ずっと近くで、自分を見守ってくれていた。
そう思ったら、抱きつかずにいられなかった。
「千秋……?千秋、俺の声聞こえる?千秋、俺が誰だかわかる?」
紘の声は震えていた。
「烏沢紘……紘さん、聞こえる。紘さんの声が聞こえる。」
千秋は、一度紘から離れると、手話をして見せた。
それは
紘
という手話。
「千秋……!!千秋っ!ごめんな、ごめんな……助けてやるのが遅くてごめんな……千秋、千秋っ……」
紘はぎゅっと千秋を抱きしめた。
「いいんです……紘さんに会えた。ずっとずっと会いたかった。話したかった。声が、聞きたかった。それから……ずっと、言いたかった。」
千秋は涙でいっぱいの目で、紘をまっすぐ見つめた。
「紘さんが……紘さんが好き……!」
千秋の言葉に、紘はぎゅっと唇を噛み締め、うつむいた。
「千秋、俺も、千秋が好きだよ。」
そう言って、もう一度顔を上げた時、紘はくしゃくしゃの笑顔を見せた。
(あ……笑った……)
その笑顔から、千秋はしばらく目が離せなかった。
*
〜恋side〜
7月5日 15時10分
<しょーとけーき(3)>
千秋さんがグループ通話を開始しました。(15時)
明希さんがグループ通話に参加しました。(15時3分)
(……何事?)
【もんぶらん】と対抗するように作ったLINEグループ、【しょーとけーき】は、明希、千秋、恋の3人のグループだった。
そこがなぜかグループ通話を開始している。
しかも千秋からだ。
千秋は話せないはず、とそこまで考えて恋はハッとした。
もしかしたら。
そう思って慌てて電話を取る。
「もしもし!!」
『恋っ!』
恋は千秋の声を初めて聞いた。
こんなにも透き通っていて綺麗な声だったのか、と思わず黙り込んでしまった。
『恋?!出たの?!』
明希がそう叫んだが、恋は黙ったままだった。
『……あれ?恋?』
「あ、ごめん!!てかどういうこと?!説明して!」
千秋から順に説明を受けて、なんとなく何があったか理解する。
「はぁぁぁまじか!」
『心配かけて、本当にごめん……』
「よかった。本当によかった!!紘さんずっと心配してたし、喜んでるだろ?」
『うん……実は、本当は直接言いに行きたかったんだけど、紘さんが今離してくれなくて、通話になってる。ごめんね。』
千秋の言葉に恋は思わずクスリと笑った。
「ほんっとによかった。」
『うんうん!あとは恋だけだぞ!!』
『そうだよ。僕もちゃんと……伝えたから。恋もちゃんと伝えてみなよ。絶対、絶対うまくいくから。』
「……うまく、いくかな?」
『うん。』
『大丈夫だよ!!もうすぐ琉さん帰ってくるんでしょ?言ってみなよ!』
「……うん。うん、わかった。言ってみる。」
明希にも後押しされ、恋がそう言った時だ。
「ただいま。」
玄関から声が聞こえた。
「あ、帰ってきた、じゃあ、行ってきます!」
『うん、がんばれ!』
『応援してる!』
恋は電話を切ると玄関の方に向かった。
「あ、お、おかえりなさいっ!」
「ん、ただいま。」
「あの、赤津さん、話があって……」
「ただいまー!」
恋の言葉を遮り、小雪が帰ってきた。
「あ、恋さん聞いてよ!琉さんね、ローデンスに一緒に来てくれるって!!」
「……え?」
恋は胸がひどく痛むのを感じた。
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