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episode.151 葛藤
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〜琉side〜
7月5日 朝
「ねー、琉さん、そろそろ決めてよー?」
事務所で小雪が琉に声をかけてくる。
何を決めるのかは琉にもわかっていた。
「もう少し考えさせてくれ。」
「何が琉さんを引き止めてるの?恋さん?」
小雪の言葉に、琉は何も言わない。
「んー、でもさ、恋さんとは契約恋愛なんでしょ?もう契約切ってしまえば関係なくない?」
小雪にそう言われて、琉の胸はチクリと痛んだ。
やはり、契約を切ってしまえば、もう恋は自分のそばにはいてくれないのか。
あれは契約だとわかっているから甘えてきているのか。
琉の頭の中にぐるぐると様々な考えが巡る。
正直、最近の恋の態度を見て、琉は期待していた。
もしかしたら、自分と同じ気持ちなのではないか、と。
だが、恋の記憶が戻る気配もなければ、恋から何かを言われるようなこともない。
旅行先で、酔った恋を見て、琉の中の独占欲は膨らむばかりだった。
誰にも渡したくない。
自分のものにしたい。
そう思えば思うほど、恋がどう思っているのか気になった。
だが恋が、自分に好意がないのなら、自分の行動は恋を縛り付けているだけなのではないかと、琉は考えていた。
(ローデンスか……)
恋から離れるのが恋のためなのだとしたら、自分が嫌でも、琉はそうできた。
この機会に、恋を手放してやるのが、いいのかもしれない。
琉はそう考えた。
「わかった、いいよ。ローデンス行く。」
*
そして帰宅後。
「ただいま。」
玄関から声をかけるとすぐには恋は来なかった。
電話でもしているのか声がする。
「あ、お、おかえりなさいっ!」
少しして恋が玄関に来た。
「ん、ただいま。」
恋の顔を見ただけで、自分の決意が揺らぎそうだった。
「あの、赤津さん、話があって……」
「ただいまー!」
恋の言葉を遮り、小雪が帰ってきた。
「あ、恋さん聞いてよ!琉さんね、ローデンスに一緒に来てくれるって!!」
「……え?」
恋がひどく辛そうな顔をした。
(あぁ、そんな顔するなよ。)
琉の決意は、簡単に揺らいだ。
だがその揺らぎは、恋の次の言葉で影をひそめる。
「そ、そうですか!ローデンスならジルさんたちもいるし、きっとうまくやっていけますね!」
恋は笑顔でそう言った。
本当に、応援する気に見えた。
琉は心のどこかで、止めてくれるのを期待していたのかもしれない。
ズキズキと胸が痛んだ。
だが、恋が笑顔で応援してくれるなら、俳優として頑張るのもいいのかもしれない。
「頑張ってください、俺、応援してます!」
「あ、あぁ、うん。ありがとう。」
琉は癖でか、恋の頭の方に手を伸ばそうとする。
が、恋はそれを避けるかのようにリビングに向かう。
琉は出しかけた手をしまい、ぎゅっと拳を握った。
もう、こういうこともしない方がいいのかもしれない。
琉はそう思った。
恋を惑わせるような真似はやめようと、そう決意して
自分の決定なのに、胸が痛くてたまらなくて、琉はどうしようもなく辛かった。
だが、琉も俳優の端くれ。
恋に心配をかけるのも嫌で、無理させるのも嫌だった。
だから自らが望んで、ローデンスに行くのだと言い聞かせ、恋の前では迷う素振りをまったく見せなかった。
そしてその日から、恋と一緒に寝るのはやめた。
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