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〜恋side〜
「あ!花火!!」
ご飯を食べ終えた頃に花火が始まった。
思えば昨年の夏も花火を見たが、その頃と比べればだいぶ変化したように感じられる。
明希は家族と仲直りし、翔也という本当に好きな人を見つけることができた。
千秋と紘は、昨年はきっとこうして花火を見るなどできなかっただろうし、恋たちと一緒に過ごすことなど考えられもしなかっただろう。
恋自身も、昨年は契約だった琉との関係が、本物になり、愛をもらい、愛を望むことができるようになった。
状況が変われば、見える花火も違う。
昨年よりはるかに美しい花火を見ている気がした。
「恋。」
愛しい人が名前を呼んでくれる。
それがこんなにも幸せなことだったなんて、昔の恋は知らなかった。
「なんですか?」
「去年も花火見たけど、今年は全然違うなって思って。ちょっと名前が呼びたくなっただけ。」
琉の目をじっと見つめれば、琉の顔がほんの少し赤くなった気がした。
「あ、りんご飴食べるか?」
琉はそう言って買っておいた飴を出す。
「あ、食べます!」
「翔也さん俺も!」
「はいはい。」
「ん。」
「ありがとうございます。」
紘は言われる前に千秋に飴を出していて、恋はそれにクスリと笑った。
赤いりんごに水飴がコーティングされた、甘い飴。
恋はこのりんご飴が大好きだった。
「…そんなにうまい?」
「ふぁい。」
飴を齧りながら答えると、琉がフッと笑って恋の齧っている反対側に口を寄せて、りんごを齧った。
琉の整った顔が間近にあり、恋は顔をカァッと赤くした。
「一口もらった。」
「は、はい…」
「…ふはっ…顔真っ赤。」
琉はそう言って恋の頬をツンツンと指でつついてきた。
「もう…人のほっぺで遊ばないでください。」
「はいはい。もう一口ー。」
今度はあーん、と口を開けてりんご飴を強請る琉。
「はい…どうぞ。」
プイッとそっぽを向いて琉にりんご飴を差し出す。
すると琉が恋の手に自分の手を重ねてそのまま口に持って行き、りんごを齧った後に恋の指をペロッと舐めた。
「なっ…!」
「んまい。」
恋は耳まで真っ赤にして、花火どころではなくなってしまった。
ドクドクと心臓がうるさくなり続けている。
(…はぁぁ…好きすぎて困る…)
真っ赤な顔が見えないように俯いて、りんごをシャクシャクと食べる。
すると突然肩を抱き寄せられた。
「ちょ…」
やめてください。
そう言おうとして、やめた。
琉があまりに優しい顔で笑っていて、恋を見ていたからだ。
少し冷静になって見てみれば、明希は翔也の肩に寄りかかり、千秋も紘と手を重ねている。
少しくらい、琉に甘えてもいいかもしれない。
そう思って、残りのりんご飴を口に含み、そのまま琉に体を預けた。
舌に甘い味が広がり、心もほわっと温かくなった。
そのまま空を見上げ、花火を眺めるのは、なんだかとても幸せだった。
「恋、こっち向いて。」
花火も最後の盛り上がりになった時、琉が突然恋にそう声をかけてきた。
素直に顔を上げると、琉の目に映る自分と目が合った。
「恋、大好き。」
琉はそう言うと、恋の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの、柔らかいキス。
花火のドォォン…という音が聞こえていて、おそらくメインの花火が今上がっているのだろう。
なんてベタな展開。と、恋は思いつつ、甘い甘いキスを受け入れる。
「…続きは帰ってからな。」
琉はそう言って、悪戯っぽく笑う。
「またそういうこと言う…」
「だって恋のこと好きだもん。仕方ないだろ?」
そう言って笑った琉の笑顔は、今度は優しげで、すごく綺麗だった。
「………き。」
「ん?」
そっと呟いた言葉は、花火の音にかき消されて、琉の耳には届かない。
耳を寄せてきた琉に、恋はもう一度、同じ言葉を言う。
「俺も…大好き。」
琉はそれを聞くと、少し驚いた顔をした後に、ふわっと笑った。
なんとなく恥ずかしくなって、花火を見上げる。
夏の夜空に美しく咲いた花は、夏の終わりとともに儚く散っていく。
でも、琉とはこれからも、ずっと、一緒にいたい。
恋は密かに、そう願うのだった。
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