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※この話は「もう一度僕を呼んで」のネタバレを含みます。両方お読みくださってる方はご注意ください。
〜恋side〜
小雪と2人で昼食を食べ、のんびりとしていたところに、突然連絡はやってきた。
「はい、もしもし。」
登録はされていない番号だった。
「…え……ラズ?!」
予想外の相手に、恋は思わず声を上げる。
一通り話を聞き、電話を切る。
「どうしたの?ローデンスからだよね?」
小雪の言葉に頷きつつ、恋は言われたことをもう一度頭の中で繰り返した。
「…戦争は、終わったらしいんですけど…ジル王子が、危篤だそうで…ラズが話せるようになってて…なんだか俺にもよくわかりません。」
「え、とりあえず、勝ったの?負けたの?」
「一応和解、みたいな感じらしいです。とりあえずローデンスに帰ることはできるそうです。」
「そ、そっか…ジル王子の状態ってどうなの?」
「大怪我を負って、危険な状態なんだとか…それで昨日は連絡できなかったそうです。」
「やっぱり僕が帰るのはまだ先かな…1週間くらいして落ち着いたら帰るよ。」
「わかりました。」
「ジル王子、大丈夫だといいけど…」
この話はさすがに日本でもニュースになり、その日の夕方のトップニュースだった。
それは当然、帰ってきた琉も知っていた。
「なあ、あのニュース本当?」
「はい。ラズから直接聞きました。」
「小雪どうするの?」
「もう少し落ち着いてから帰る。」
「そっか…ジルは大丈夫なのか?」
「わかりません…とりあえず今は危険な状態らしいですけど…」
「まあ、僕たちが何か話してても仕方ないし…今は報告を待つしかないね。」
小雪が明るい声でそう言い、恋と琉も頷く。
「ところでさ、琉さん新しいドラマの撮影、始まったんだって?」
小雪が話題を変える。
「あー…そうだよ…それな…明日から撮り直しになった。」
「え、なんで?」
「配役が急遽変更になったんだよ。それで撮り直し。まあ俺も全然OKでなくて、あんまり進んでなかったんだけどな。」
「どんな役なんだっけ?」
「1日ごとに少しずつ記憶がなくなる役。毎日いろんなものを忘れていく男の役。」
「うわなにそれ超難しそう。」
「ファンタジックすぎてイマイチ実感ないよなぁ。前回の反響かなんかで、また恋人役は男だし。まあいいんだけどさ、でも恋じゃなきゃ恋愛感情出せないし、相手俳優を恋に見えるようにとか考えたら、記憶なくすとかそっちの演技がまたおろそかに…」
恋は黙って2人の会話を聞いていた。
どうやら今回のドラマは若手の演技派俳優と呼ばれる琉でも難しい役どころのようだ。
「じゃあさ、恋さんで練習したらいいんじゃない?」
「…は?」
「もともとさ、2人って契約恋愛もさ、琉さんのドラマのために始めたんでしょ?それなら恋さんも演技力それなりにあるってことだよね?」
「俺は演技力ないですよ!」
「そうかなぁ?できると思うけど。琉さんは感情移入すれば強いし、恋さん相手なら、少なくとも恋愛感情の心配はいらないでしょ?」
「まあな…」
「それに、記憶をなくすってことは結構シリアス系のドラマなんでしょ?」
「そりゃな。」
「本当に好きな相手のこと、忘れると思ったらどんな気分?」
「…嫌だな。嫌だし、怖い。」
「それだよ。きっと、その感情が演技に出ればいいものになるんじゃない?」
あれよあれよと小雪に乗せられ、琉と恋は、ドラマの台本通りの生活を送ることになってしまった。
「…俺にできますかね…?」
「まあ……記憶なくしてる期間は1ヶ月の撮影期間中だけだから、大丈夫だと思うけど、翔也にも頼んどくわ。」
琉はそう言うと、恋に台本を手渡す。
なんだか懐かしい展開だ。
契約恋愛を始めた時も、台本を手渡され、軽くだが中身を見た覚えがある。
そして翔也にも事情を説明して理解を得た。
出会った頃を思い出し、恋はそっと笑った。
「なに笑ってるの?」
「いえ、初めて会った頃を思い出して…」
「出会いはドラマだったもんな。悪いな、付き合ってもらって。」
「いえ、琉さんの役に立てるならいいです。」
恋はそう言って微笑む。
だが、この時恋は、まだ知らなかった。
琉の演技力は並外れていて、思った以上に、台本通りの生活は苦しいことを。
愛する人と引き裂かれることは、どれほど辛いのかということを、恋は改めて、思い知らされることとなる。
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