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〜恋side〜
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
「ただいま、スズ。」
琉が口にしたのはスズヤの名前。
でも、恋の頭からは、日記の内容が離れなかった。
「ちょっと部屋行ってくるな。」
琉は恋の頭をポンポン、と撫でて2階に上がる。
いつもなら放っておいてご飯やお風呂の用意をするところだが、恋は琉を静かに追いかけた。
琉は寝室ではなく、翔也と明希が泊まる部屋に入った。
恋は少しだけドアを開けて、中を伺う。
「…もう…恋のことしか残ってない。」
琉が呟く声が聞こえる。
琉がすすり泣いているらしく、その声も聞こえる。
いつもの恋なら、ここまで演技にのめり込める琉に感心するところだが、今回はそれどころではない。
「…もう…忘れたくない…」
琉はノートをぎゅっと抱きしめながら涙を流していて、それを見ていた恋の目からも、また涙が溢れる。
そっと扉を閉めて、ズルズルとしゃがみこむ。
膝を抱えて、ボロボロと流れる涙を必死に止めようとするが、それはなかなか止まってくれない。
考えれば考えるほど、涙は溢れるばかりだ。
少し経って、突然、扉が開いた。
「…スズ?」
恋は顔を上げることができない。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を、上げることなんてできない。
「…おい、恋、大丈夫か?」
琉は隣にしゃがみ込み、恋の肩に手を添える。
恋の様子がおかしいことに気づき、琉は演技をやめた。
「恋、こっち向け、恋!」
琉にグイッと顔を起こされ、琉と目があう。
「…っ!!…恋…っ…」
琉の顔を見ても、恋、と名前を呼ばれても、涙が溢れて止まらない。
ボロボロとこぼれ落ちる雫は、恋のズボンにシミを作る。
「…っく…ひっく…うっ…うぅっ…りゅ…っ…さんっ…」
なんとか発した声は、掠れていて、嗚咽交じりで、ちゃんと琉の名前を呼べたかも怪しい。
「恋、大丈夫だから、泣くな?俺がそばにいるから。な?大丈夫だから。」
琉は優しくそう言う。
「忘れちゃ…いやっ…りゅ…さんっ…わすれないでっ…いやだ…おいてかないで…」
恋は琉に抱きつき、縋り付くようにして泣きながらそう言う。
「ひとりに…しないでっ…」
恋の頭の中によぎったのは、両親がいなくなり、一人ぼっちになった時のこと。
家に帰っても誰もいない。
冷たい部屋。
広すぎる家。
大好きだった両親と、離れ離れになってしまった。
それから、ずっとずっと、愛を忘れて生きてきたのに、琉から与えられたから、もう、手放せない。
この温もりも
この愛も
手放したくない。
「…すき…好きなの…りゅうさんが…好きなのっ…!」
愛する人と心が離れるのは、こんなにも辛いことだったか。
恋の目からはとめどなく涙が溢れてくる。
「恋…ごめんな。日記、読んだんだろ?」
恋はコクリと頷く。
「周りの人を、実際に考えてみたほうが、本物に近い感情がわかると思ってやったんだ。でも、不安にさせたよな、ごめんな?」
琉は優しく恋を抱きしめ、そっと頭を撫でる。
その温もりに、恋はまた涙を流す。
「大丈夫だから。俺は恋から離れないよ。ちゃんと恋のそばにいるから。ずっと、恋のそばにいるから。」
優しい声色でそう言われ、少しずつ恋の気持ちは落ち着いてくる。
「恋、大好きだよ。恋から離れたりなんかしないから。大丈夫。ずっとそばにいるからな。大丈夫だ。」
大丈夫、という言葉を繰り返す琉。
恋は琉の胸に顔を埋めて、抱きつく腕をぎゅっと強くした。
琉はしばらくの間、恋を抱きしめて、頭を撫で続けてくれていた。
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〜琉side〜
恋が泣き疲れて、眠ってしまい、琉は恋を寝室に運ぶ。
まさか恋があんなに泣くなんて、思ってもみなかった琉は少し驚きながらも、嬉しい気持ちもあった。
忘れないでほしい、ひとりにしないでほしい。
恋は普段、そういうことを言わない。
寂しい、怖い、悲しい、辛い
そういう感情は、なかなか表に出してくれない。
こんな風に言ってくれて、少し安心したのだ。
それだけ恋は、自分のことを大切に思ってくれているらしいこともわかった。
涙で濡れた、恋の頬や目元をそっと手で拭う。
「恋、愛してる。」
そう言って額にそっとキスを落とす。
まだ時間は18時だ。
恋が起きたら、とことん甘やかしてやろう。
琉はそんなことを考えて、寝室を出た。
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