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〜琉side〜
「お邪魔します。恋くんは?」
約束通り、30分後にインターフォンが鳴り、零と遥がやってきた。
「2階にいます。」
零を連れて2階に行き、遥にはリビングで待ってもらうことにした。
零は触診したり、聴診器を使ったり、体温計で熱を計ったり、いろいろなことをして診察しているようだ。
ピピッという音がなり、体温計を取り出した零は顔をしかめた。
「39.1…こんなに熱があるのに、今まで何も言わななかったんですか?急にこんな高熱にはならないですよ。少し前から体調悪かったんじゃないですかね。」
言われてみれば、今日、恋が眠ってしまう前に抱きしめた時、少し温かかった気もする。
「まあ、ストレスでしょうね。ここ最近、何かありましたか?」
「…あー…まあ…」
琉は零に、役作りのために台本通りに過ごしていたことや、恋が今日、泣きじゃくった話をした。
「…そうでしたか。恋くんは抱え込む癖がありますから、少し気にかけた方がいいですよ。おそらく、ちょっとやそっとの体調不良じゃ口に出したりもしないでしょう。そのまま無理して、ストレスも溜めて、こうして爆発させてしまうのだと思います。」
恋は、"言わない"のではなく、"言えない"のか。
何年もの間、1人で我慢してきたせいで、誰かに頼ったり、甘えたりすることは人一倍苦手だ。
セックスしてる時くらいでないと、本音は言わない子だろう。
「まあ、とにかく、しばらくゆっくり休ませて、彼のしたいことをさせることですね。彼に言わせるのですよ?」
零にそう言われ、琉は頷く。2人で遥が待つリビングに向かった。
「恋くん大丈夫そうなの?」
「しばらく休めば大丈夫だよ。」
心配そうな顔をする遥の頭をそっと撫で、優しくなだめる零。
遥は妊娠6ヶ月で、安定期に入っているとはいえ油断は禁物だ。不安な気持ちやストレスを溜め込むことは体に毒になる。
「すいません。身重の遥さんに迷惑かけてしまって…」
「いえいえ!!零を迎えに行くって言ったのは俺ですし、車の運転くらい大丈夫ですよ。」
「赤津さんが気にすることではありませんよ。確かに遥の体は心配ですけど、恋くんの方がだいぶ体調が悪そうに見えますしね。」
「そんなにひどいの?」
「熱は高い。いい状態とはお世辞にも言えないよ。」
「そうなんだ…」
「仕事とかはしばらくお休みさせてくださいね。それでは俺たちはこれで。」
零は遥を連れて、一礼すると帰って行く。
恋が起きたときのためにおかゆでも作ろうかと思い、琉がキッチンに立った時、ドタン!と大きな音がした。
何かあったのかと思い、琉は慌てて2階に行く。
「恋?!」
扉を開けると床に倒れこんだ恋がいた。
「…ぁ…りゅ…さん…」
入ってきた琉の顔を見た瞬間、恋はポロポロと涙をこぼす。
「いなく…な、ちゃ…たかと…おも…ました…」
琉は恋を抱き上げ、そっとベッドに戻す。
「ちゃんといるから。熱出てるからゆっくり寝てな。お腹すいた?おかゆ作るけど食べれそう?」
そう言ってもう一度1階に行こうとした琉の服の裾を、恋が控えめに掴んだ。
が、すぐにパッと離してしまう。
「恋、どうした?」
「な…んでもない…です…」
「いいから言ってごらん。」
「…えっと…あの…ご飯…いらないから…いっしょに……いてほしいなって…でも琉さん…ご飯たべてないし…」
「なんだ、そんなことか。ご飯ならいいよ。一食抜いたくらいじゃ死なないし。恋がいいなら一緒に寝ようか。」
琉がそう言うと、恋はコクコクと頷く。
よほど不安らしい。
人は弱ると素直になるらしいが、恋は本当はこうして甘えたかったのかもしれない。
「でも寝るならさすがにいろいろ用意しないとな…ちょっとだけ待ってられるか?」
恋は不安そうに瞳を揺らす。
「氷とか洗面器持ってくるだけだから。な?」
そんな恋の頭を優しく撫でてそう言えば、恋は待ってます、と静かに言った。
できるだけ急いで用意をする。
恋が寝てる間にシャワーを浴びたので、このまま寝ても問題はないだろう。
恋の体を拭いてやろうかどうしようか迷って、今日はそのまま寝かせようと決めた。
琉が部屋に戻ると、恋はぎゅうっとウサギを抱きしめていた。
「恋、お待たせ。」
ベッドのそばに寄ると、恋はウサギから顔を上げ、琉をじっと見つめる。
「寝る前に薬だけ飲もうな。」
零が置いていってくれた薬を出し、恋の体を少しだけ起こす。
薬を入れ、水を流し込んでやると、少し飲みづらそうにしたがこくん、と飲み込まれたのがわかった。
「おでこ冷やす?」
額を冷やしても直接熱を下げる効果はないが、心地よいのは間違いない。
恋は少し迷って頷いた。
琉は冷たいシートを恋の額に貼って、首や脇、鼠蹊部の氷を替えて、恋が抱えていたウサギを枕元に置くと恋の隣に潜り込んだ。
「おやすみ。ちゃんとここにいてやるから、ゆっくり寝ていいよ。」
琉がそう言って頭を撫でると、恋はスリスリと擦り寄ってきた。
控えめに背中に手を回し、きゅっと抱きつく。
それをしっかり抱きしめると恋も抱きつく力を強くした。
次第に恋の目はトロン、と眠たげになって、背中をトントンと優しく叩いているうちに、眠りについた。
琉もそれを見て瞼を閉じ、やってくる睡魔に身を任せた。
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