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〜紘side〜
9月30日
「おはよう千秋。」
「おはようございます…」
目をこすりながら起きてきた千秋を見て、紘は目を細める。
「千秋、誕生日おめでとう。」
「へ…?わぁ…!」
パチッと目をしっかり開けた千秋は、食卓に並んだ朝食を見て目を輝かせる。
琉から教わったフレンチトーストを作ってみたのだった。
「紘さんが作ったんですか?」
「うん。琉に教わったよ。」
今日に至るまで何度か練習し、何枚かパンを黒焦げにしてダメにしたが、千秋のこの顔を見たらその苦労も飛んで消えてしまう。
「今日は1日、千秋の好きなことに付き合うよ。したいことはある?」
仕事を鬼のようなスケジュールで詰め込み、わざわざ今日を休みにするほどだ。
どんなことでも叶えてやりたかった。
「…じゃあ…デートしたい、です。」
だが千秋からこぼれた願望は、それはそれは可愛いものだった。
紘は目を細めて優しい顔をする。
「どこに行きたい?」
「紘さんが行きたいところ…がいいです。」
フレンチトーストを口に運びながら、千秋は少し頬を赤らめてそう言う。
あまりに可愛いおねだりに、紘の頬は緩みっぱなしだ。
「行きたいところはないの?」
「あ…」
どうやら何か思い出したらしい。
紘は無言で千秋が次の言葉を紡ぐのを待つ。
「水族館…に、行きたいです。」
「なんで水族館?」
「前に、恋と明希と、デートに行きたいところって話をしてたんです。定番がいいよねって話から出てきたのが、水族館と映画館とお祭りと遊園地でした。」
お祭りには行ったし、今見たい映画もないから、と言う千秋。
紘は今千秋が言ったところ全てに、必ず連れて行こうと密かに決心した。
「わかった。じゃあ、今日は水族館に行こう。」
そう言って微笑めば、千秋も嬉しそうに笑った。
「僕…今すごく幸せです。こんな風に紘さんに誕生日を祝ってもらえるなんて…」
「俺も祝ってもらったしな。1番に祝いたかったんだけど…1番になったのか?」
少し笑いながら聞くと、千秋は気まづそうに苦笑いする。
どうやら1番ではなかったらしい。
「実は…日付が変わってすぐに恋と明希からおめでとうLINEが来てたので…」
なんだ、そういうことか。と紘は納得した。
おそらく2人で計画してやったに違いない。
微笑ましいことだと思い、紘はふふっ、と笑った。
「でも直接言ったのは俺が初めてだな。」
「はい。ありがとうございます。」
千秋がふわっと笑ったのを見て、紘の心はポカポカと温かくなったような気がした。
「どこの水族館がいい?」
「…わかりません。家族と行ったことがある場所しか知らないので…」
「じゃあそこに行こうか。」
「え…」
「せっかくの誕生日だからな。どこなんだ?」
「鎌倉の方の、水族館です。」
「わかった。今日はそこに行こう。」
「紘さん…ありがとうございます。本当に嬉しいです。」
「さ、そうと決まったらご飯を食べて準備しないとな。」
「はい!」
終始嬉しそうな顔でフレンチトーストを食べきった千秋は服を着替えるために先に部屋に入った。
紘はその間に皿洗いだけ済ませ、部屋に行く。
「千秋、入っていいか?」
着替えていたら、と思い一応声をかける。
「は、はい!」
「……おお。」
「あ…変、ですかね…?」
千秋の格好は七分袖のパステルブルーのシャツに白いパンツでよく似合っていた。
「いや、似合ってるよ。」
そう言って微笑んで、頭を撫でると、千秋は嬉しそうにした。
最近、千秋がよく笑ってくれる。
紘はそれが嬉しくて、千秋の笑顔が見たいがためにいろいろなことをやっている。
「さて俺も着替えるか。」
「じゃあ、リビングで待ってますね。」
「わかった。」
千秋が出て行って、紘も適当に服を引っ張り出す。
濃いめの紺色のシャツを少し腕まくりして、千秋とお揃いのつもりで白いジーパンを履いた。
「お待たせ。」
「…かっこいい、ですね。僕とは全然違う…」
頬を赤らめてそう言う千秋はものすごく可愛かった。
「千秋は可愛いよ。」
「もう、なんですかそれ。可愛いって男には褒め言葉じゃないじゃないですか。」
千秋はクスクスと笑いながらそう言う。
「…そういえば紘さんって香水とかつけてるんですか?」
「香水?あぁ…仕事行くときは少しな。石鹸とかに近い香りを選んでつけてるよ。」
「ふふ…いい匂いします。服に移ってるんですかね?」
千秋はそう言うと紘の腕に顔を寄せて、スン、と息を吸った。
「…よし、行くか。」
「?はい。」
頭の中に湧いた煩悩を振り払うために、千秋の手を引いて財布、携帯、家の鍵、車の鍵を持って家を出る。
千秋はハンカチやら何やらも入れているらしく小さなバックを持っている。
車に乗り込んで、紘はすう、と深呼吸をする。
今日1日、いやせめて夜までは理性を保たせなければ、という気合いを入れたのであった。
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