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〜恋side〜
「ん…っ…」
「あ、悪い、起こした?」
「りゅ…さん…?」
時計をふと見やると時間は23時で、2時間くらい寝ていたらしい。
「寝てていいぞ。」
「…や…いかないで…」
部屋を出て行こうとする琉の服の裾を掴んでそう言う。
寝起きで頭がぼーっとしていて、自分でも何をしているのかわからなかった。
「大丈夫だぞ?ちょっと下行くだけだから。」
「や…行っちゃやだ…」
「…仕方ないなぁ…」
琉は苦笑いしながらベットに潜り込んでくる。
10月の夜ともなれば少し肌寒くて、琉の体温は心地よかった。
「ほら、おやすみ。」
琉の胸元に頬を擦り寄せ、ぎゅっと服を掴む。
「恋…」
名前を呼ばれて顔を上げると、琉の瞳が欲情の色を映していて、途端に恋の背筋に悪寒が走る。
(琉さんだから…これは、琉さんだから…)
必死に自分に言い聞かせるようにする。
琉の手が頬に触れる。
温かいのに、体が冷えていく気がした。
「恋。」
覗き込まれるように顔が近づいてきて、体がこわばる。
そして次の瞬間には琉の体を突き飛ばしていた。
「っ…あ…ぁ…」
カタカタと体が小刻みに震え出し、目に涙がたまる。
「恋…?」
琉は体を起こして恋に触れようと手を伸ばしてくる。
「やだ!」
そう叫んでからハッとした。
擦り寄ったのは自分なのに。
行くなと言ったのは自分なのに。
拒否してしまった。
「あ…ごめんなさ…」
「…今日は俺、別の部屋で寝るわ。」
「え…」
「おやすみ。」
「りゅ、さん…!」
パタン、と音を立ててしまった扉は、もう開かなくて、恋の頬に涙が伝う。
今日は泣いてばかりだと、自嘲した。
「っ…うぅ…っう…うぅ…」
止めようと思っても止まらない涙は、布団にポタポタとシミを作っていく。
胸が苦しくなって、ウサギをぎゅっと抱きしめる。
それでもズキズキと胸が痛んで、どうしたらいいかわからなかった。
「…ひとりに…しないで…」
出てきた言葉は、自分の行動とは矛盾していて、それでも呟かずにいられなかった。
膝を抱えて、ウサギに顔を埋めて、ずっと泣いていた。
いつの間にか外は明るくなり、時刻は6時。結局恋は、一睡もできなかった。
朝食を作ろうと思い、1階に下りる。
だが、シンクに使用済みのマグカップがあって、恋の心臓がドクン、ドクン、と音を立てる。
まさか、と思って玄関に行くと、やはり琉の靴はなかった。
朝早くに出て行ったのか、昨晩、あの後出て行ったのか。
どちらにせよ、自分とは顔を合わせたくなかったということだ。
「そりゃ…そうだよな…」
はっ、と乾いた笑いが漏れる。
「…嫌われた、かなぁ…」
口に出してみると、それは思った以上に辛くて
朝ご飯を食べる気にもならず、恋はソファに丸くなった。
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