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〜恋side〜
18時
「ただいまー。」
「お帰りなさい。」
「…え?!恋さん?!」
帰ってきた奏を、恋がエプロン姿で出迎える。
「なに、兄さんきてるの?」
「あ…いえ…」
「奏、手洗ってらっしゃい。琉はしばらくお仕置きなのよ。」
「え?意味わかんないんだけど。母さんそれどういうこと?」
混乱する奏に、事情を説明すると納得したようだった。
煌は既に帰宅し、事情も知っている。
「また兄さんはなにしたんだか…どうせ最低なことばっかしたんでしょ?じゃなきゃ恋さん怒んないもんね。」
奏は手を洗い、リビングに入ってくるとそう言った。
「琉兄ちゃんは迎えに来るの?」
「どうだろう…来ないかもね…」
煌の質問に恋が返すと、奏は、それはない、と言った。
「絶対迎えに来るから、あの人。ただ、ここを頼ってるってわからないんじゃない?」
恋が頼るところなんてそうあるものではない。
明希、千秋くらいなら琉もすぐに思い浮かぶだろう。
あとは盛大に勘違いをして、傑、という選択肢が生まれるかもしれないが。
なんにせよ、ここを頼っている、と琉が思い至るには時間がかかりそうだった。
「あんたたち、琉に言っちゃダメよ。これは琉への罰なんだからね。」
眞弓が奏と煌にそう言う。
完全に恋の味方をしてくれるらしい。
「わかってるよ。兄さんもたまには焦ったらいいんだよ。」
「恋さんいてくれるの嬉しいし、琉兄ちゃんが自分で解決することだから黙ってるよ!」
奏も煌もどこか楽しんでいる節があるような気がするが、恋はそれには触れないでおく。
「さ、お風呂入ってらっしゃい。父さん帰ってきたらご飯にするわよ。」
「「はーい。」」
眞弓の言葉に返事をして、奏と煌はそれぞれ、一旦部屋に戻る。
残された恋と眞弓は夕食の準備に取り掛かる。
今日のメニューはグラタンだ。
冬場の今には美味しいメニューであり、琉の好物である。
何度も作ったグラタンは、おそらく琉好みの味が得意になっているはずだ。
「ふふ…それ、琉の好きな味ね。」
眞弓は恋の作り方を見てそう言った。
やはり身についているのは琉に出す時の味付けらしい。
「赤津家の味を完全に覚えてるわねぇ。」
眞弓はそんなことを言いながらクスクスと笑う。
改めてこうしてみると、自分はやはり琉のことが好きなのだと思う。
なんだか言い過ぎたか、と思うが、今回は譲りたくない。
若干意地になっている恋は、今のこの生活を楽しむことに決めた。
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