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〜貴也side〜
11月25日 9時
「ど、ど、どうしようどうしようもう無理やばい死ぬ!」
「貴也!あんた朝からうるさいわよ!」
奏とのデート当日、朝起きてまず寝癖がついてることに絶望した貴也は洗面所で叫び、瑞貴に怒られていた。
「もう!母さん俺のこと起こしてよ!!」
「知らないわよ。八つ当たりしないで。ご飯食べるならさっさと食べて!」
そう怒られて貴也は用意されていた朝ごはんを5分でかきこむ。
歯を磨いて顔を洗って、寝癖と格闘するも、寝癖はなおる気配がない。
「翔兄さん助けて!!」
『朝から何よ…俺今日久しぶりに休みなんだけど…まだ9時じゃん…俺4時間しか寝てないんだけど…』
部屋に戻り、翔也に電話をかけると眠たそうな声が返ってきた。
どうやら遅くまで仕事で朝帰りだったようだ。
「寝癖!寝癖のなおし方教えて!」
『ふぁぁ…水つけて適当にとかせば直るんじゃん?』
「それでなおんないの!!」
『じゃあワックスでも、ふぁぁ…つければぁ?』
翔也は眠そうな声しか返してくれない。
「ワックスなんて持ってないし!!」
『ふあぁぁ…出るまでにはなおるだろ…俺はまだ寝るから…おやすみ。』
翔也はそう言って電話を切ってしまった。
この日までの貴也といえば、手持ちのBL漫画を駆使して色々なシミュレーションをしてきた。
漫画の中の受けの子はものすごく可愛らしいが、現実の自分はかけ離れている。
そもそも今日の待ち合わせは10時で、7時には起きるはずだったのに寝坊。
起きてみれば寝癖がついていて、こんな姿で奏に会うなんて恥ずかしすぎる。
選んだ私服は自分の中では精一杯のおしゃれで、ジーンズに白いニットだが、どうも子供っぽいような気がする。
部屋の姿見の前でうんうん唸っているとあっという間に時間は過ぎていく。
「やばい!遅刻する!!母さん行ってきます!」
「行ってらっしゃい。奏くんに迷惑かけないでね!」
「わかってるー!!」
慌ただしく飛び出し、待ち合わせ場所の最寄駅に走る。
駅に着くのはギリギリの時間になりそうだ。
「はー、もう、待つなら俺だろー!!」
受けが奏か自分かと言われれば確実に自分だ。
待ち合わせは受けが待っていて、ナンパされるとかいうのがよくある展開なのだ。
まあ自分がナンパなどに合うとは思えなかったが。
駅が近づいてきて、貴也は走るのをやめる。
コートの襟を整え、息も整えて落ち着いて歩く。
駅の改札前には、その美貌を隠しもせず、スマホをいじる奏。
「はわぁぁ…かっこいい…」
心の声が漏れたかと思い口を塞ぐと、どうやら声は自分が出したものではなかったようだ。
隣を歩いている女子2人組が、奏を見てそう言っている。
「あれ誰かに似てない?」
「えー?有名人?」
「あ、わかった!赤津琉に似てる!」
(そりゃあ琉さんの弟だもんね。)
「あー、似てるかも!てかかっこよくない?!足長い!」
黒い細身のパンツが奏のスタイルを引き立てていた。
白いタートルネックのニットに、ベージュのチェスターコート。
どこからどう見たってイケメンだった。
「声かけちゃう?」
「えー、でもあれ、誰か待ってるっぽくない?」
「彼女かなぁ。」
聞こえてくる声に、足を踏み出せなくなる。
奏が待っているのは自分で、自分は男で、期待に沿うような絵になるカップルにはなれない。
もうすぐそこに奏がいるのに、貴也は近づけないでいた。
するとポケットに入れていたスマホが震える。
見ると、奏からだった。
俺少し遅れそうだから、ゆっくりでいいよ、という連絡。
「嘘つけ…」
もう駅についているくせに、貴也に気を遣わせないようにそういうメッセージを送ってくる奏。
かっこよすぎて、近づけない。
そんなことを考えて俯いた。
「貴也くん、今着いた?」
声が聞こえて顔を上げると、にっこり微笑んだ奏がいた。
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