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〜恋side〜
12月5日
「んんんんん…」
恋はスマホを見ながら唸っていた。
膝の間にぬいぐるみを抱え、スマホをじっと見つめる。
その画面には
『婚約者に喜ばれるプレゼント』
という題名の記事。
今月25日は、琉の誕生日だ。
昨年は自分がプレゼントなどという苦肉の策を実施した上に、翌日に事故に遭い、お祝いムードなどではなかった。
今年こそは、琉に喜ばれるプレゼントを、と恋は張り切っていた。
明希と千秋にも相談したいところだが、まず何を買うか、どんなことをするかさえ決まっていない。
相談しようにも、まず何を相談しようかというところなのだ。
画面をスクロールさせ、記事を見ていく。
アクセサリーや、日常使える小物などのプレゼントかオススメされているが、琉は一体、何なら喜ぶだろうか。
「俳優さんが使うもの…んー…」
恋はソファで体を揺らしながら必死に考える。
「あ!!いいこと思いついた!」
パッとした思いつきで、プレゼントの1つは決まった。
もう1つくらい、プレゼントを用意したいが、一体何がいいだろうか、とまた悩み始める。
誕生日当日の夕食は、出かけようか、それとも手作りにしようか、それにも迷い、恋はまたウンウン唸り始めた。
ひとまず思いついたプレゼントの手配をして、家事の片手間に考える。
そんなことをしていたせいか、時間があっという間に過ぎていき、気付けば18時になっていた。
「…あっ!ご飯作ってない!」
今日は琉から早く帰れると聞いていたのに、とんだ失態だ。
それに気づいたタイミングで、ドアが開く音がして、恋は頭を抱えた。
「ただいま。」
「お帰りなさい。あの、ご飯作ってなくて、今から作るので少し待っててください。ごめんなさい!」
焦って早口でそう言うと、琉は優しく笑う。
「いいよ。気にすんな。具合でも悪かったのか?」
「いえ…」
まさか、琉さんの誕生日について考えていました、などとは言えず、笑って曖昧にごまかす。
「体調悪いんじゃないならいいけど…あ、それなら外食でもするか?」
「へ?」
「たまにはいいだろ。外食。デートしよう。」
思わぬところで出かけられることになり、恋は密かに喜んだ。
「外食デートとか、なんかいいな。付き合いたてみたい。」
「ふふ、ですね。」
「着替える?」
「はい。少し待っててもらえますか?」
「おう。ゆっくりでいいよ。」
そうは言われたものの、琉と出かけられると思えば自然と早くしたくなってしまう。
最近忙しくて、なかなか一緒に過ごせないからか、余計に嬉しく思った。
「お、早いな。」
クスリと琉に笑われて、なんだか少し照れくさい。
「よし、じゃあ行きますか。」
「はい。」
2人で家を出て、並んで歩く。
さりげなく手を握ってくれることに、恋の頬がほんのり赤くなった。
「まだ赤くなるの?手繋ぐくらいで。」
「だ、だって…慣れないんですもん。琉さんといるときは、いつだってドキドキします…」
舞い上がっているせいなのか、思っていることが簡単に口からこぼれ出る。
「可愛い。」
チュ、と軽く額にキスをされ、恋の顔が真っ赤になる。
「道端ですよ!」
「いいじゃん。」
「もう…」
「何食べたい?」
「んー…俺特にないですけど、琉さん食べたいものあります?」
「食べたいものはないけど…行ってみたいところがある。」
「どこですか?」
「…ついてからのお楽しみだな。」
琉はそう言って笑うと、その目的地に向かって歩き始めた。
恋はどこに行くのか不思議に思ったが、特に尋ねることはせず、琉に手を引かれるまま、少しだけ琉の手を握り返して歩いた。
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