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〜恋side〜
12月25日 18時
「やばい、遅くなっちゃった。」
街中はイルミネーションで輝いていて、ケーキの売り子の声や、商店の呼び込みの声が飛び交っている。
恋は今日ギリギリ出来上がった琉へのプレゼントを手に、帰路を急いでいた。
琉の帰宅は19時の予定。
夕飯の用意をある程度してからプレゼントを受け取るために家を出てきたものの、19時までにケーキのデコレーションをしなければならない。
今年は2人きりでの誕生日。
琉と2人で過ごすこと自体、ここ最近はなくて、自然と気合いが入ってしまう。
家に着いてすぐ、ケーキのデコレーションを始める。
生クリームを塗って、フルーツを飾る。
黙々とそれをこなしていると、時間はあっという間に19時前だ。
「…よし、あとは琉さんが帰ってくるのを待つだけ…」
恋はふぅ、と息を吐いてソファに腰掛ける。
するとスマホが震えて、見ると琉からのメッセージが来ている。
琉「今から少し出てこれる?」
こんな時間にどこに行くんだろう、と不思議に思いつつ、返信する。
すると、駅前の広場に来てほしい、と言われた。
今、駅前の広場は大きなツリーがあって、イルミネーションが施されていた記憶がある。
軽いデートのつもりなのかもしれないな、と思い、コートを羽織って駅に向かった。
歩いていると、吐く息が白い。
空は思ったより澄んでいて、星が少し見える。
「はぁ…さむ…」
ポケットに手を入れて駅への道を急ぐ。
プレゼントを持ってくればよかったと思ったが、食事は家で取るだろうと思い、まあいいかと考える。
駅に近づくにつれてだんだんと人も店も増える。
駅前が見えてきて、ツリーの前に琉がいた。
恋は走ってそちらに向かう。
「お、走らなくてよかったのに。」
「すいません、待ちました?」
「いや、さっきの電車で戻ってきたから待ってないよ。」
「急にどうしたんですか?」
「ん?大事な話があってさ。」
それは家ではダメだったのだろうかと不思議に思い、首をかしげる。
ツリーの前で、琉と向かい合う。
やけに真剣な顔つきをしている琉に、恋も少し緊張する。
「ずっと前から、今日言おうって決めてた。」
人の往来はあるのに、なんだか2人きりの空間になったようで、静かな沈黙が流れる。
琉がポケットから、小さな箱を取り出す。
心臓がばくばくと鳴る。
「俺は、恋のことが好きだ。だから、ずっと恋と一緒にいたい。」
紡がれる言葉ひとつひとつに、恋の胸が高鳴る。
恋の目に、涙が溜まった。
「俺と結婚してください。」
すぐに返事を返すことなんてできなくて、涙がポロポロ溢れる。
キラキラとしたイルミネーションに照らされた、優しい顔をした琉が、少しずつぼやけていく。
「これ、受け取ってくれるか?」
パカ、と開けられた箱の中には、銀色のリングがおそらく入っているのだろう。
だがそれすら、涙で視界がぼやけて、しっかり見ることができない。
拭っても拭っても溢れる雫は、ポタポタと地面に垂れる。
「恋。」
優しい声で呼ばれて、そっと手を取られる。
大きな手が、涙を拭ってくれた。
「愛してる。俺と一緒になってほしい。」
「んっ…ん…」
コクコクと頷くことしかできない。
俺も愛してるとか、結婚したいですとか、言いたいことはたくさんあるのに、そのどれも言葉にならない。
言葉の代わりに、涙ばかりが溢れた。
「もう、泣きすぎ。」
ふわっと抱きしめられて、琉の匂いと温もりを、いっぱいに感じる。
「っ…すき、だいすきっ…」
やっと紡げた言葉は、昨年は、言いたくて言えなかった言葉。
「うん。」
「りゅ、さんが、すきっ…」
「指輪…受け取ってくれる?」
「んっ…」
こくん、と頷くと、優しく体を離される。
スッと左手を取られて、銀色のリングがはめられる。
「……あ。」
微笑んでいた琉が、そっと夜空を見上げる。
「ゆ、き…」
ホワイトクリスマスなんて、いつぶりだろう、と考える。
「俺、運持ってるな。ホワイトクリスマスにイルミネーションの前でプロポーズ。ドラマみたいなロマンチックなこと、一番大切な人にできてよかった。」
頭をぽん、と撫でられて、止まりかけていた涙がまた溢れた。
「よし、帰るか。」
手を伸ばされて、その手を掴む。
「2度と離してやんねえ。」
「おれ、も。はなしませんっ…」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を、精一杯笑顔にする。
琉はそれを見て、幸せそうに笑った。
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