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〜恋side〜
「恋。」
何も言えずにいた恋を、そっと離して、琉がじっと見つめる。
琉の目からは涙がまだこぼれていて、恋の胸が、ぎゅっと締め付けられた。
「これ、なんだけど。」
「あっ…!!」
琉がポケットから取り出したのは、恋が必死に探していた指輪。
「さっき、ここに来る途中で拾った。」
まさか琉の手にあったとは思わず、それでもそれが見つかったことに安心した。
「恋が、こんな薄着で外にいたのが、もし、これを探すためだったとしたら…もしこれが、捨てたんじゃなくて、落としたんだとしたら…」
琉の言葉は、ものすごくゆっくりに聞こえた。
「もう一度、これを受け取ってほしい。」
それは、覚悟していた別れ話ではなくて。
「俺と、結婚してください。」
「ーーーッ!」
人生2度目のプロポーズ。
同じ人から、同じ指輪を、違う気持ちで受け取る。
愛してるなんかじゃ、足りない。
言葉で表せないほどの、愛と、気持ち。
「今度こそ、2度と手を離さない。俺が、恋を幸せにしてみせる。これからも問題があるかもしれない。でも、俺が守るから。だから、俺と…」
言葉の代わりに、恋の目から、涙がこぼれた。
言いたいことは山ほどあるのに、その全てが言葉にならない。
まるで、声が全て涙に変わってしまったみたいに、ボロボロと目から溢れていく。
「俺と、一緒にいてくれる?」
コクコクと頷くのが精一杯で、溢れる涙で視界がぼやける。
「はぁぁ…よかった…」
琉にぎゅっと抱きしめられて、涙でぐしゃぐしゃになった顔を、琉の胸に埋める。
優しく頭を撫でられて、ひどく安心した。
「ごめん。本当にごめんな。」
「も、いい、です…おれ、りゅ、さんと、じゃ、なきゃ…しあわせに、なれない、から…」
言いたかったことが、やっと言えた。
琉がいなければ、今の恋には、幸せなどやってこない。
今後恋の愛する人は、琉しかいないのだから。
「っ…恋…ごめん。本当に、ごめん。」
「いっぱい、ほしいもの、くれないと、ゆるしません…」
「俺があげられるものなら、なんでも。」
「プリン…と、ケーキ…」
「うん。明日の仕事帰りに買ってくる。」
「おいしい、ごはん…」
「うん。帰りが早い日に食べに行こう。」
「1日、デート…」
「うん。今度の休みに行こう。」
「おそろい、の、食器…」
「うん。一緒に買いに行こう。」
「その、ゆびわ…」
「うん。もちろん。恋のものだからな。」
「それ、と、婚姻、届…」
「…うん。デートの前に、先にそれ出しに行こうか。」
「まだ、たりない…」
「うん。何がほしい…?」
「一生、愛してくれなきゃ、ゆるしません…!」
「っ…当たり前だろ。お安い御用だな。」
体を離されて、少し寂しく思う。
顔を覗き込んできた琉が、恋の涙をそっと拭って、瞼にキスをする。
「愛してる。」
以前とは違う重みを持ったはずのその言葉は、不思議と心地よく聞こえた。
「お、れも、あいして、る…」
泣いているせいで、途切れてしまったが、きちんと伝わっただろうか。
琉の顔を見ると、嬉しそうに細められたその目から、止まっていたはずの涙が、ぽろりとこぼれた。
「あぁもう。泣くなんてかっこ悪いな。」
そう言って微笑む琉の顔は、一生忘れられなさそうだった。
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