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〜傑side〜
「そろそろ行こうか。」
「うん。」
前にいる明希と千秋に声をかけ、人混みを抜ける。
「はー!楽しかった!」
「また来たいね。」
「だな。」
3人が楽しそうにそう話しているのを見ると、来てよかったと思う。
傑自身も、同級生と出かけるのは久しぶりで楽しかった。
「お土産も買ったし、帰ったら寝るだけ!」
「明希は翔也さんにちゃんと報告しないとじゃない?今日大丈夫でした、って。」
伸びをしている明希に千秋がそう言う。
「そうだ!」
傑が逐一報告していることを知らない明希はハッとしてそう言った。
「まあこれで旅行に行けるな。」
「いや…まだ早い。」
安心した様子の恋に対して、傑はそう言った。
「は?」
「…駅着くまで、絶対に後ろ振り返るなよ。」
「なんでだよ。」
「いいから。」
後ろに、先ほど傑たちを見ていた男たちがいる。
少しずつ、距離を詰められている。
「なになになに?!」
「どうかしたの?」
明希と千秋が心配そうにそう言う。
「大丈夫。とりあえず駅まで行けば大丈夫だから。」
「ねえねえ!」
後ろから声をかけられる。
「無視しろよ。振り返んなよ。」
声をかけられて、さすがに状況が読めたのか、3人は振り返らずに、歩調を早める。
「ねえってば、君たち。」
しつこい。
「ねえ、君たちだよ。」
男が、ぽん、と恋の肩に手を置く。
傑がそれを払った。
「昼はよくもやってくれたな。」
傑は振り返って、しまった、と思った。
昼間追い払った男が、仲間を連れて声をかけて来たらしい。
「ほらほら、そんな怖い顔すんなって。悪いな、こいつは気性が荒くてさ。」
あたりを歩く人たちは、自分たちの話に夢中で、こちらの様子は気にもとめていない。
4人は男たちを無視して歩く。
相手も4人だから、1人ずつ相手にしようとでも思っているのだろう。
「この後食事でもどう?」
「もう遅いですし、彼氏が迎えにくるんで。」
「本当に彼氏いんのー?あ、でもこの3人指輪してる。」
恋たちの指を見て、男が残念そうな声を上げる。
これで諦めてくれるかと思ったときだった。
「君は?」
「は?」
「君は指輪もつけてないし…彼氏いんの?」
「…いますけど。」
もちろん、傑に彼氏などいないが、ここで正直に答えたって面倒なだけだ。
歩みを止めることなく適当に答える。
「本当?でもこの3人よりはフリーってことだよね?指輪してないし。」
優しそうな顔の男が、傑の腕を掴んだ。
「傑!」
「離せよ。」
後ろに引っ張られて、歩みが止まる。
男をにらんだ。
恋たちも歩みを止めしまった。
「おー、怖い。」
「おいおい、がっつきすぎだろ。」
「だって俺この子がいいんだもん。」
「わけわかんねぇー。そっちの3人のが可愛いじゃん。」
「わかってないなぁ。」
好き勝手に会話をされ、その間も腕を離してくれない。
思ったより力が強く、無理やり解いて問題にもしたくない。
「お前ら先行ってろよ。」
「でも傑は?」
「後から行くっつの。」
「お?俺たちの相手してくれる系?」
「離してくれないから、時間ないから先行けって言ってるだけだし。今すぐ離してほしいんだけど。」
傑は、恋たちのように、ナンパに恐怖を感じたりしないし、面倒だと思うだけだ。
恋たちのことがなければ今すぐ殴り飛ばしてもいい。
だが、ここで手を出して問題になるのは、恋たちに迷惑がかかるだけでなく、下手したら琉や翔也のスキャンダルにつながりかねない。
知り合いが暴力事件を起こした、などとニュースで話題になるのは避けたいところだろう。
「その強気が燃えるねぇ。」
「お前マジで趣味悪りぃよ。」
体を抱き寄せられて、さすがに嫌悪を感じた。
「離して。」
体を捻ると、後ろに別の男に回られた。
そのまま路地裏に引っ張られる。
「傑!」
明希の叫ぶ声が聞こえる。
さすがにまずい。
いくら傑が、3人よりは力があるとはいえ、男4人を相手にするのは不可能だ。だからといって恋たちに何かしてもらうのも不可能。
「おい、いい加減にしろよ。」
「おーおー、怖いねえ。でも君の方が不利なんだよ、スグルくん。」
男に囲まれ、恋たちの姿が見えないことが不安だが、この間に逃げてくれるなりなんなりしてくれればとも思う。
3人だけにするのは心配だが、それでもこの場にとどまるよりいい解決法があるはずだ。
「あれー?お友達いなくなっちゃったね。」
ひとまずこの場から離れてくれたようで、少し安心する。
これで少しは自由に動ける。
「薄情なお友達だねぇ。」
「お前らに関係ないだろ。」
空いている手で腕を掴む男を殴ろうとする。
が、その腕を後ろから掴まれる。
「っ…」
「お、表情がこわばったねぇ。かぁわいい!」
「お前キモいな。」
「えー?せめてSって言ってー。」
腕を掴まれたらさすがに抵抗のしようがない。
本格的にまずい。
焦る心とは裏腹に、頭は変に冷静で、自分が襲われる側になってみると、改めて明希への罪悪感が生まれる。
傑はさほどの恐怖を感じないが、明希はきっとものすごく怖かっただろう。
ムシャクシャしていたとはいえ、明希を自分のものにしたいと思ってやったこととしては、最低だった。
「なーに考えてんの?あんまり怖がんないね。」
顎を掴まれて、男の顔が迫ってくる。
嫌でもこの先何をされるかなんてわかる。
必死に抵抗をしてみるが、やはり4人相手ではどうしようもない。
これも、過去の自分への罰か、と思い、受け入れようとしたその時だ。
「とりゃぁぁぁっ!!」
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