アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*187
-
〜翔也side〜
翔也は、仕事を終え、先に終わっていた琉と紘と合流した。
「傑の報告に笑ったの俺だけ?」
琉がそう言ってクスクスと笑う。
「いや、俺も笑った。」
「あれか、恋が男を蹴ったっていう。」
「それですそれ。恋くんやりますよねー。」
「逃げる、どうにかする、以外に蹴るっていう発想が出たのはいいけど、傑いなかったら絶対やばかったよな。」
「確かにね。でもまさか蹴るとは…」
「恋も面白いことをするな。」
そんな話をしていたとき、翔也のスマホに着信が入る。
「あ、明希ちゃんだ。もしもし。」
『も、しもし…』
聞こえてきたのは、明らかに泣いている明希の声。
翔也の頭が冷静さを失っていく。
「もしもし?!」
かなり大声を出してしまい、琉と紘が驚いた顔をしたが、翔也はそれを気にする余裕がない。
「どうしたの?なにかあった?なにかされた?今どこ?」
矢継ぎ早に質問を重ねる。
明希はえっと、と繰り返すだけだ。
『えっと、もうー!聞いてくださいっ!!』
明希が思い切りそう言って来た。
(あれ?元気だな…)
「ご、ごめん。」
とにかく謝る。
『俺じゃなくて、傑が!傑が襲われかけたんです!』
「傑くんが?」
傑が、1人でいて襲われるとは考えにくい。
それなら、3人を守ったと考えるのが普通だった。
明希は傑が心配で泣いていたのか、と納得した。
『だから、その…こっちまで、迎えに、きてほしくて…琉さんと、紘さんも…』
だんだんと声が小さくなっている。
もともと3人で迎えに行く予定だったし、場所が最寄り駅ではなくなっただけなのだから、そんなに申し訳なさそうにしなくていいのに、と思った。
「わかった。じゃあそっち行くね。」
そう言いつつ、琉と紘に目で合図して、車に向かう。
『はい…おねがいします…ごめんなさい…』
「謝らないの。」
『ありがとうございます…』
「琉と紘さんもここにいるから。あ、恋くんたちに電話代わるか聞いてくれる?」
『え?あ、一緒にいるんですか?!ちょっと待ってください。』
向こうで話している声が少し聞こえる。
「翔也、恋に代わってもらうように言ってくれる?」
「あ、うん、わかった。」
琉の言葉に、翔也はクスリと笑った。
『もしもし?変わらなくていいって。え?変われって?はーい。恋、琉さん。』
翔也が琉にスマホを渡す。
「もしもし、恋、大丈夫か?」
過保護だなぁ、と思わなくもないが、気持ちもわかる。
まして恋は、怖いとはなかなか言わない。ナンパされた時も押し黙って耐えていたのを、翔也は思い出した。
「泣いてない?本当に大丈夫?無理すんなよ。」
翔也は紘と顔を見合わせてクスクス笑う。
あまりに心配しすぎだ。
「待ってろよ、行くから。」
琉からスマホが戻ってくる。
運転用のイヤホンに切り替えて、通話を続けながら、車を出した。
『千秋も大丈夫ですって、紘さんに伝えておいてください。』
「うん、わかった。明希ちゃん、傑くんに代わってくれる?」
少し、傑にはお説教が必要だ。
『も、もしもし…』
「傑くん?あんた、自分が何したかわかっとるん?」
翔也は本気で怒っている。
琉と紘が関西弁に気づいて止めようとしたが、遅い。
『その、す、すいません…』
「…はぁ…何に怒っとるかわかっとらんやろ。」
『えっ?』
「俺はな、別に身を呈して明希ちゃんたちを守って欲しいなんて思ってないんよ。無茶して傑くんが襲われてって、それは違うやろ。」
3人だけにするのは心配だから、どうしても傑が守る立場になってしまうのは仕方ないとしても、無理して守ろうとするのは違う。
「傑くんに何かされて、明希ちゃんたちが泣くんやったら、俺、傑くんを許さへんよ。でもな?別のやつらに絡まれたんを、傑くんが守りきれなくたって、怒ったりせえへんで。頼むから、自分の身も大切にして。」
『っ…ごめんなさい。』
「わかればよし。今向かってるから。どこで待ってるかだけ後でLINE送って?」
『はい。明希に変わります?」
「いや。もう大丈夫。俺たち着くまで、とりあえず3人のことよろしくね。守れ、とは言わないけど、やっぱり3人だけにするわけにいかないからね。」
翔也はそう言って笑う。
翔也にしては静かに怒った方だ。
「じゃ、また。」
そう言って電話を切る。
「千秋くんも大丈夫ですって。」
「そうか。傑も大丈夫そうか?」
「声聞いた感じでは。その辺のフォローは明希ちゃんたちに任せますよ。」
翔也はそう言うと、優しい微笑みを浮かべた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
390 / 832