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〜琉side〜
「記事の中身読んだ?ほんま意味わからんで。なんやねん、琉が騙されてるって。アホちゃうん?」
バシッ、と机に週刊誌を叩きつけた翔也。
事務所への告知もなしに、突然記事になった恋の過去。
対策のしようがない状態で、あちこちのワイドショーに取り上げられた。
おそらく今頃、恋のところにも電話や取材が行ってしまっている。
だが、今は連絡を取ることを控えろと事務所から言われた。
「明希ちゃんと恋くんが友達やってことも嗅ぎつけたみたいやで。それもまた意味わからん記事になっとるわ。明希ちゃんが脅されてるとか。そもそも明希ちゃんがUHのお坊っちゃんに戻ったんは最近やで?!」
だいぶ怒っている翔也は、先ほどから関西弁が止まらない。
「俺んとこにくる取材は、恋くんのこと知ってたんか、とか、明希ちゃんは脅されてたんか、とかで、ふざけてんのかコラって言いたなるわ。」
「恋、怖がってるだろうな…」
「…お前ほんまに自分の心配せえへんな。」
「俺は別に。これで芸能界干されるならそれはそれだし。」
「まあ今回は週刊誌側のでっち上げやし?ほんまのこと世間に言うたら、危ないんはあっちやで。名誉毀損や!名誉毀損!!遥さん呼んだろか!」
琉より怒っている翔也に、思わず笑ってしまう。
だが、琉は恋が心配でたまらない。
とりあえず深夜になれば、家にいる取材陣は減るだろうから、帰宅することはできるだろうが、住所がバレてしまっている以上、恋は家から出られないだろう。
「記者会見、開くしかないよな。」
「せやな。なんなら俺も出たるで。」
「お前が出たらややこしくなんだよ。」
「なんでやねん。」
「お前その関西弁、出さない自信あんのか?絶対キレるだろ。」
うぐ、と黙る翔也。
キレたら止まらないのだから、記者会見をしたところで翔也はキレるに決まっている。
「とりあえず、お前んとこに行った取材には、本当のこと答えて良いって言われてるし、お前が思った通り言っていい。」
「任せとき。俺は嘘はつかんで。」
「お前今日はずいぶん怒ってるな。」
「当たり前やろ?!なんであんなええ子が傷つかなあかんねん!!」
翔也が、ダンッ、と机を叩く。
「お前冷静すぎや。」
「俺が心配なのは恋が今どうしてるからだけだから。1人で泣いてたらと思ったら今すぐ帰りたい。」
「…まあ落ち着けや。それしたらなおさら過熱するやろ。」
「わかってる。だから今必死で抑えてんだろ。」
今日の撮影分はすでに終わっていて、本当ならもう帰れるはずだった。
1分が何時間にも感じられるほど、時間が過ぎるのが遅い。
やっと週刊誌との話がつき、帰っていいと許可が出たのは0時をすでに回っていて、翔也に送ってもらって琉は帰宅した。
「恋!」
リビングに勢いよく入ると、暗い中、端で膝を抱え込んで震えている恋が目に入る。
「恋…!」
もう一度名前を呼ぶと、ゆっくり顔を上げ、琉を見ると駆け寄ってきて抱きつかれる。
「ごめん。怖かったな。遅くなってごめんな。」
その体はすっかり冷え込んでいて、怖さだけでなく、寒さで震えているのがわかった。
「とりあえず毛布持ってくるから、そこ座ってて。」
不安そうな恋をソファに座らせ、リビングの電気をつける。
それから毛布を取りに行き、恋の肩から毛布をかけて、ホットミルクを作った。
「これ飲んで。あったまるから。」
コク、と頷いた恋の目が腫れていて、琉はそっと恋の目元を触る。
「怖かったよな。ごめんな?」
そう言うと首を横に振り、泣きそうな目で琉を見る。
「おれっ…が…迷惑、かけたから…ごめん、なさいっ…」
「迷惑なんてそんなのないよ。あの記事、恋が元AV男優ってことしか合ってねえし。絶対大丈夫だから。」
恋をぎゅっと抱きしめて、優しく背中をさする。
「俺が守るって言ったろ?大丈夫だから。恋は心配するな。」
コク、と恋が頷いて、体を寄せてくる。
ひとまず落ち着いてくれたようで安心した。
とはいえ、記者会見を開くのは3日後と決まっていて、その間はずっと取材が付きまとうだろう。
恋がこんなに怯えているのを見ると、1人で家に残したくないが、かと言って琉が家に残っても逆効果だ。
どこかに預けようにも、隣の千秋たちの家ではすぐにバレるし、明希たちの家も、今回の関係性から言うと取材が及ぶ可能性もなくはない。
実家はすでに取材が来ていると言っていたし、他に思い当たるところもない。
琉が困り果てた時、スマホが着信を知らせる。
だが、番号は登録されていないものだ。
「はい、赤津です。」
『もしもし。赤津さん?覚えてます?俺のこと。』
聞き覚えのある低い声だが、いったい誰だろう。
『城田ですけど。』
「……城田…城田潤哉さん?!」
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