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〜琉side〜
城田潤哉(しろたじゅんや)は、恋がAV男優をしていた頃の先輩で、琉も一度だけ会ったことがあった。
『ええ。どうも、ご無沙汰してます。』
会ったのは昨年の9月のことで、もうすっかり忘れていたが、そういえば連絡先を渡したような気もする。
「どうも…あの、何か御用ですか?」
『ニュースを見て、連絡しました。恋の過去のことが問題になってるみたいですね。』
「えぇ…」
『家にまで取材が押しかけてるんじゃないかと思って。』
「はい。昼間はすごかったみたいで…恋が怯えてて…」
腕の中で、体を縮こめている恋をチラッと見る。
『でしょうね。赤津さんは今までスキャンダルがありませんでしたから、マスコミが食いついてるんでしょう。』
なぜか芸能事情にも詳しい潤哉。
潤哉の言う通り、琉に初めてのスキャンダルだったために余計にマスコミの注目を集めている。
『それで、これは提案なんですが…』
潤哉からの思ってもみない提案に驚きつつも、それが可能ならば恋のためなのではないかと思った。
「少し待ってください、恋に聞いてみます。」
そう言って一度スマホを遠ざけて、恋のことを覗き込む。
「恋。」
名前を呼べば、俯いていた顔を上げる。
「しばらく、城田さんの家に行く?」
「潤哉さんの、家?」
「そう。取材が落ち着くまで…というか俺が記者会見するまでの間、城田さんが恋を泊めてくれるって言ってるけど。」
潤哉の家ならば、セキリュティはしっかりしているし、マスコミにもバレていない。
恋が恐怖を感じることも、ここにいるよりはないだろう。
「琉さんは…?」
「俺が行くとまた問題になりそうだから、記者会見までの3日間は別かな…どうする?」
「3日間、だけ?」
「うん。3日後の記者会見では、必ず解決する。」
「潤哉さんの家に、行ってもいいですか…?」
「うん。いいよ。」
不安そうな恋の頭を優しく撫で、もう一度スマホを手に取る。
「城田さん、お願いしてもいいですか?」
『わかりました。今からと早朝とどっちがいいですか?昼間に迎えに行くのはまずいですよね。』
「今からお願いしてもいいですか?」
『わかりました。』
電話を切ると、恋がギュッと抱きついてくる。
「ん、どうした?」
「離れちゃう、から…すこしだけ…」
「…城田さんが来るまでこうしてようか。」
「…でも…」
「迷惑じゃないから。むしろ俺も寂しい。あ、でもホットミルク飲んどけ。体冷えてるし。」
「はい…」
コクリとミルクを飲んだ恋が、ホッと息を吐く。
「琉さん…」
「ん、おいで。」
恋を抱きしめて、毛布で包んでやる。
手足の先が冷え切っていて、本当に心配でたまらない。
「…1人にしたくねえな。」
「ひとりじゃ、ない、ですよね…?」
「まあ、城田さんたちはいるけどさ。」
潤哉の家には、潤哉の恋人がいたはずだった。
恋はその恋人とも面識があるから、きっと寂しい思いはしないと思う。
それでも、そばにいてやれないことが申し訳ないし、心配だった。
「絶対迎えに行くからな。」
「はい…」
顔をスリスリと寄せてくる恋の頭を撫で、ぐっと体を抱き寄せる。
「寝てもいいよ。」
「ん…でも…」
時間はもう1時前だ。
今日はいろいろあって疲れただろう。
「大丈夫。ずっとこうしてるから。」
そう言うと、コク、と頷いて体を預けてくる。
背中をトントンと叩いてやると、少しして、恋の体から力が抜ける。
「寝ちゃったな…」
サラ…と恋の前髪を耳にかけ、表情を見る。
すっかり安心した表情になっていて、スヤスヤと寝息を立てていた。
よほど不安だったのか、琉の服を小さく握っている。
その手をそっと撫でて、服を離させて手を握った。
しばらくして、潤哉から、家の前に着いたという連絡が来た。
恋をソファに横たえて、数日分の着替えやらなんやらを大きめのバッグに詰めて用意した。
まだ眠っている恋を抱き上げ、コートを着せて外に出る。
「さっむ…」
冷気を肌に感じて、思わずそう呟く。
恋には暖かい格好をさせて正解だったな、と思った。
「あ、ここです。」
「すみません、夜遅くに。」
車に近づく。
助手席に、ウトウトと微睡む少年…いや、青年の姿がある。潤哉の恋人だ。
「いえ。恋寝ちゃったんですか?」
「ええ…起こすの可哀想なので、このまま連れて行ってください。」
「…でもそれだと、起きた時に恋が混乱するんじゃ…」
「…心配ですけど…俺の方が手放せなくなりそうなんで。恋のこと、よろしくお願いします。」
「はい。」
「いつでも電話していいって、それだけ伝えといてください。」
琉はそう言うと、車の後部座席に恋を寝かせた。
「…恋があなたのことを好きになるのもわかります。」
「え?」
「いえ、別に。恋にあなたがいてくれてよかったと思って。迎えに来るの、待ってますから。」
「はい。必ず行きます。」
自分もついて行きたい衝動を抑えて、琉は車を見送った。
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