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〜恋side〜
「りゅ、さん…?」
翌朝、目を覚ますと、隣に琉はいなかった。
慌てて体を起こして、ここが自分の家ではないことを理解した。
「起きた?」
「あ…潤哉さん…」
部屋に潤哉が入ってきた。
「赤津さんから伝言。いつでも電話していいってさ。」
「電話…?」
「そう。恋が寝てる間に家に連れてきちゃって悪かったな。」
「いえ…」
「赤津さんが、起きたら手放せなくなりそうだからって。ずっと心配してたから、用事なくても後で電話してやれよ。」
「はい…」
「食欲は?」
「あんまり…」
「だろうと思った。鈴と同じ野菜スープ飲む?」
「いただきます。」
鈴(りん)は潤哉の恋人で、恋も何度か会ったり話したりしたことがある。
だから、潤哉と鈴と過ごすことは嫌ではないのだけれど、どうしても心細くて、食欲もわかないし、ため息が出た。
「んな顔すんなよ。すぐに迎えに来てくれんだろ。」
「わかってますけど…」
「ま、せっかくだし鈴と遊んでやってよ。気晴らしにもなるだろ。」
「はい…」
それからの3日間、確かに鈴や潤哉と過ごすのは楽しかったのだが、それでも不安感が拭えなかった。
琉に迷惑をかけてしまったし、何か大変なことになっていないかと心配だった。
だが、迎えた3月3日の記者会見で、恋の不安は全くの杞憂だったことを、恋は痛感する。
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3月3日
「恋、記者会見始まった。」
昼のワイドショーで、生中継の記者会見。
潤哉と鈴と3人で、テレビをじっと見つめていた。
『赤津さんの婚約者が、元AV男優というのは事実ですか?』
記者からのその質問に、恋はぎゅっと拳を握り締める。
『はい、事実です。』
琉は落ち着いた声で、あっさりと認めた。
『それでは、記事は事実ということなんですか?!』
『いえ、あの記事はほとんどが嘘です。確かに俺の婚約者は元AV男優でした。ですが、記事に載っていたような脅しや騙されたということは一切ありません。』
『それでは、交際を始めた当初から、過去はご存知だったということですか?』
『はい。俺の婚約者は、幼くして両親を亡くし、止むを得ずAVの世界に入りました。ですが、もともと望んだ仕事ではなかったので、今ではきっぱりとやめています。』
『なぜ、AV男優をやめたのですか?それは赤津さんと付き合い始めたからなのですか?それではお金が目当てで騙したと思われても仕方がないのでは?』
『俺と付き合い始めた頃は、まだ彼はAV男優でした。』
契約恋愛の時のことを考えれば、琉の言っていることは間違っていない。
もちろん、恋だってお金が目当てで琉と付き合っているのではない。
契約恋愛の時に、お金をもらっていたのは、契約、という一線を敷きたかったからだった。
『彼の両親は、事故で亡くなったのですが、それは故意に起こされた事故でした。そのことが解決したので、AV男優は辞めたんです。』
記者に対して、堂々とそう答える琉に、恋も少し安心した。
『AV男優だった過去は、確かにいいものには思えないかもしれませんが、現在の彼には関係のないことです。AVは悪いものでもないと思います。そして何より、俺は彼自身を愛しています。彼の過去だとか、そういったものはどうだっていいんです。ですから、俺は彼との婚約を取り消したり、別れたりするつもりは全くありません。それが芸能人として相応しくないと言うのなら、迷いなく引退します。』
琉ははっきりと、しっかりとした口調でそう言った。
「…へぇ。恋の恋人やるじゃん。」
「れん、ないてるの。」
潤哉と鈴に覗き込まれる。
恋の目からは、涙がボロボロとこぼれた。
「愛されてんな、お前。」
「はいっ…」
琉を好きになって、本当に良かったと思う。
こんなに愛してくれて、大切にしてくれて、本当に嬉しかった。
その日の夜、琉は約束通り、恋を迎えに来た。
琉と2人で潤哉にお礼を言って、恋は自宅に戻ることができた。
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